こんにちは。不動産鑑定士のふくろうるです。
不動産鑑定士試験を上位で合格した私の論文3科目の勉強方法Tipsをご紹介します。
今回は最終回の民法編です。
↓経済学編(教養科目の基本方針もこちらに記載)はこちら
↓前回の会計学編はこちら
学習上のポイント
民法は、条文や法学の基本的理解のほか、試験問題に示されたケースごとに、条文・解釈・判例をあてはめていくということが特に重要になります。
そのためには、テキストの理解やある程度の判例の暗記は必要であるものの、いかにそれらの理解をうまくあてはめに使えるかという応用能力・論文の構成能力が必要になります。
よって勉強方法としては、まずテキストを読み込んだ後は、問題集での答案構成の練習が必須となります。
応用論点はマニアックすぎて学習効率が悪いので、基本論点の問題集を繰り返し解き、回答方法のパターンをつかむとよいでしょう。
この練習の際には、必ず問題に示されるケースの理解・関係者の構造等を図の形で整理するのがよいです。
- 登場人物
- 人物間の関係
- 権利移転の流れ
- 請求権の流れ
を図で整理し、誰と誰の間に、どんな権利関係が発生し、なんの請求ができるかを把握します。
答案の構成
次に答案の構成です。
書き出し
答案の書き出しは、
- 現状の認識・理解(図で整理したもの)から
- 〇〇という状況が発生している。
- ここで〇〇が〇〇できるかが問題となる。
という形で、
「今のこの状態は法律的に問題を生じているが、民法に照らし合わせると、このような請求ができるかどうかということが問題となっている。」
という形で、図で整理した結果を文章に落とし込み、この後の論文で何について論じるのかをまず明示します。
なお、法学の論文試験の定番としては、
①法律要件とその効果の説明
②本件事実の確認と法律要件へのあてはめ
③本件事実にかかる効果の結論
という流れを意識するのが本当のところだと思いますが、不動産鑑定士試験ではそこまでの厳密さは求められていないかと思いますが、説明の際の流れはこれを意識したほうがよいでしょう。
なぜなら、採点者は法学の研究家であり、このような順番で書かれている答案を採点するのが、彼らの思考回路に最もなじむからです。
適用できる条文と判例の明治
次に
- 民法〇条では、「(引用)」と規定されていること。
- 判例の解釈ではこういう説があること
を示し、このような場合には、この条文を使って解決するのがよいのではないか、このような判例があるのでそれを使うと解決できるのではないかという、根拠を示します。
上記でいうと①に相当する部分です。
ここで、判例をつかって解決の根拠を示す場合には、テキストでは多数説・少数説等いろいろな説が示されていますし、どちらを使っても正解であると習ったかと思いますが、おすすめは両方とも理解しておき、問題の事例に合わせてどちらの説を使うかを変えることです。
どのように変えるかというと、今回の事例でたくさん論点が取れる方です。
各説は、簡単に書き終わってしまう論点の少ない説もあれば、たくさんの論点の検討が必要になるものもあります。
(例えば、「〇〇が問題となる⇒○○説では~⇒ここで〇〇が問題となる」のように論点が入れ子状に入っている判例・解釈のことです。)
社会正義や皆さんの主義主張との相性もあると思うのですが、こと論文式試験においては、たくさんの論点をかけた方が点数的に有利になります。(部分点がたくさん入ります。)
また、例えば一つの論点がやや外していても、ほかの論点での部分点が取れることもあります。
よって、覚えるのは困難でも論点がたくさんある方を選んだほうが、民法の点数は安定します。
事例へのあてはめと結論
話はずれましたが、次に当てはめを行います。
上記でいうと②に相当する部分です。
前段で解釈した判例等を、今回の事例に当てはめると、「Aは〇〇、Bは〇〇なので、Aの〇〇請求権が認められる。」
というような形です。
あわせて、そのあてはめの結果、誰のどんな請求権が認められるのかという最終の結論を導き出します。
これは、あてはめとのセットのように記載することが多くあるかと思います。
上記でいうと③に相当する部分です。
結局のところ、最終的に誰のどんな請求権が認められるのかというのが、試験の最終的な答えとなるものですから、必ずこの部分を書くようにした方がいいでしょう。
仮に途中で論点を飛ばしてしまっても、最終結論を書かずに終わってしまうと、採点上はもったいないことになります。
この面でも、いきなり答案を書き始めず、答案構成としてしっかり度の論点を書き、どのような結論に落ち着けるかをあらかじめ考えておくべきです。
私は大問1つあたり、約10分は答案構成の時間にあてていました。
試験のレベル感
民法の試験範囲は、物権・債権の内容をほぼ網羅したものとなっており、法学部の1-3年生で習う内容とほぼ一致します。
宅建や行政書士などと違い、論文を書かなければならないため、その他の資格試験と比べても難度は高いと思います。
私の受験時代は、公認会計士試験で扱われた論点が2-3年遅れて鑑定士試験で出題されているといわれていたため、練習では公認会計士試験の問題演習に取り入れました。
(公認会計士試験は司法試験の論点が2-3年遅れて出るといわれていたので、結局司法試験の民法も5年分程度チャレンジしました。)
民法は行政法規と同じく、実務ではかなりお世話になる科目となります。(特に借地・借家関係)
それが一つのモチベーションにもなるかと思います。
試験委員対策
最後に試験委員対策ですが、こちらも会計学に負けず劣らず学者さんの派閥がありますので、著書を読み、考えを理解しておくに越したことはありません。
一方で、会計学や経済学と比較して試験委員の先生の著書は難しい印象があります。
運よく委員の先生が入門書等を出していたら読むくらいでいいのではないでしょうか。
少数説・多数説
民法テキストでは、判例や学説に解釈がある場合、複数の説が示されています。
論文を書く際に使うのはその説の中の1つではありますが、もし余裕があれば両方とも覚えることが望ましいです。
その理由として、
使わない方の説は、当て馬にすることで、より深い理解をしているように見せられる
使わない方の説の論点を出し、「確かに〇〇という考え方もあるが、一方〇〇と考えると~」のような形で、反対意見を理解したうえで、それでもこういう理由から私はこちらの説をとっている。
ということが言えると、論点のより深い理解が示せます。
このテクニックは会計学の論文試験でも効果を発揮します。
(会計学は意思決定有用性と利害調整で対立させるとうまくいくことが多いです。民法では、当事者の利益の考量の観点が使えると思います。ここまでを請求権者に要求するのはあまりに酷であるとか、権利の濫用に当たるとか、よく使えるワードでまとめて理解するというのが、学習負担が少ないと思います。会計学でいう企業会計原則や概念のフレームワーク的な考えのベースを作ることです。基礎法学をやったことがある人はこのあたりの理解ベースがあるので強いです。)
両方の説は覚えられない場合
それでも両方覚えるのは時間的に難しいのであれば、以下のような戦略が考えられます。
論点の多数ある方を覚えて少ない方は捨てる
論点の多数ある方のみを覚え、主義主張はともかくとしてそれを使うように論文を書くことが考えられます。
この場合、プラスアルファの得点は狙えませんが、点数の大きな取りこぼしは防ぐことができますし、民法での合格ラインを超えるのには十分です。
これが一番学習の費用対効果の大きい方法だと今は考えています。
(上記の方法は加点を狙ったゆとりある合格プランです。)
多数説のみ覚える
あるいは経済学などほかの科目で得点を稼ぐ戦略の場合は、多数説のみを学習することも考えられます。
多数説は現在の判例や一般的な解釈で普及している説になりますので、こちらを選んでおけば、少なくとも減点されることはありません。
教養3科目は、どのように点数をとっても価値は同じなので、自分が勉強していて楽しいか、苦しくないかも含めて戦略を考えるといいと思います。
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