本稿は筆者Bearringの寄稿になります。
留意事項等は下記リンクページをご参照ください。
問1
(1)
定番の穴埋めであり、迷うところも少ない問題でした。
④
気圧変化量は、1の位と小数点第一位を示しています。
⑦
過去天気は観測時の6時間前(9時と21時の天気図の場合)から1時間前までの天気を指します。
(2)
これは4つの閉じた等圧線を囲む西と東の等圧線の気圧をまず把握する必要があります。
A.朝鮮半島北部の高気圧の等圧線の値は図より1016hPaです。
B.朝鮮半島南部の低気圧の閉じた実線の等圧線は、その内側に点線の閉じた1010hPaの等圧線があるため、1012hPaです。
C.中国華中の高気圧の等圧線の値は図より1014hPa(点線)です。
つまり、BとCの間に1014hPaの等圧線をひく余地はありません。
D.東海道沖低気圧の大きなほうの等圧線は内側の小さな円が1008hPaのため、1012hPaになります。
ここまでわかると、西側にある東西に蛇行した南北に貫いている等圧線の値(α)は、1012hPa(A(1016)は高気圧なのでそれよりも低く、B(1010)は低気圧なのでそれよりも高い必要があるため)とわかります。
次に東側の南北に貫いている等圧線(β)は、Dの低気圧よりも高い必要がありますから、1016hPaになります。
そして、αとβが4hPa差で、その間に稚内のバツ印が入っていることから、この関係は正しいということが確かめられます。
後は線を通すだけで、
稚内からAとαの間をを通り、そのまま四国沖の×印に向かいます。
四国沖のバツ印のすぐ南の隙間は1012hPaと1012hPaの間なので通れません。
東海道沖のDの東をぐるっと回り最後の×印に向かいます。
なお、解答例では山陰沖で等圧線が大きく湾曲していますが、これはその南北にある風向が大きく異なることから、北側で気圧の谷、その南側で気圧の尾根があることが想定され、それを反映したものとなっています。
(3)
これは寒冷低気圧の問題ですので、南東象限では対流不安定になりやすく、積乱雲が発達しやすいということを解答させたい問題だと思います。
今回は雲があるのは南東側ではありませんが、中心の東側に雲頂高度が高い雲があるということを示すことがポイントになります。
また、問題では「中心と」その付近の雲域の特徴とありますので、中心付近では低く、その東側では・・・とつなげることが大切です。
(4)
まず、300hPaの強風軸は、寒冷渦周辺を回るようにあるおよそ60ノットの風速のものと、その下に80ノットの等風速線を通るものの2本があります。
衛星画像の縮尺が違うためわかりにくいですが、この2本とも、水蒸気画像では暗域に
対応しています。
今回は北側の渦を巻いている方を答えますが、水蒸気画像ではこの渦の形に暗域がありますので、ほぼ同じ位置にあるというのが答えとなります。
寒冷渦は冷たく、水分を含めないこともあり、水蒸気画像では暗く写ります。
つまり対流不安定になりやすい領域であり、付近で下層に暖湿空気が入りこみ、何らかの収束層があるとシビアな現象が発生します。
(5)
中・上層雲の雲低高度は、湿数がおよそ3度以下になる高度を探します。
よって420hPa付近です。
過去問によっては湿数0度となる部分を雲低高度の正解としている年度もありましたが、今回はその領域はないため、3度以下で判断します。
このあたりは問題によって対応を変えるしかないと思います。
低層雲の雲頂高度は同じ判断をすると780hPa付近となりますが、回答では700hPaとなっています。
700hPa付近は湿数が10度ほどあり乾燥していますが、問題文の後段に、900hPaより低い高度の空気塊が上昇したことより発生したとあります。
これを考えて、エマグラムの980hPa付近から、空気塊を持ち上げるエマグラムの作図を行ってみます。
すると、980hPaが持ち上げ凝結高度であり、状態曲線とも交わっていますので、自由対流高度の入り口です。
そこから湿潤断熱線に沿って空気を上昇させると、700hPa付近で状態曲線と交わります。
ここが「平衡高度」となりますのでここまで雲は発達すると考えることができます。
試験場でこれを思いつくかは難しいですが、問題文にある指示を解釈し、答えは700hPaに絞ることができました。
問2
(1)
黄海の寒冷低気圧の中心は初期時刻でも24時間後でも5700mの等高度線に囲まれています。
しかし、24時間後にはこの5700m線は相当小さくなっています。
ということは、全体的に高度が上がり、気圧の谷の最大深さは変わらないものの、持ち上げられていることがわかります。
このまま持ち上げられ続ければ36時間、48時間と進むうちに中心の等高度線が5760、5820と上がっていく方向に動いているわけですから、「高度が上がっている」ということになります。
(2)
九州付近の温帯低気圧は、前面に暖気移流、後面に寒気移流が明確ですが、黄海の寒冷渦は温度移流の方向が定まっていません。
この問題では、寒冷低気圧は温帯低気圧と異なり、温度移流が明瞭ではないことを答える必要があります。
問3
(1)
①
乾燥空気の流れを答えさせる問題ですので「暗域」に着目しなければなりません。
あとは見たままを答えればいいわけですが、乾燥した空気が寒冷低気圧の南東象限に流れ込み、その下で対流が不安定になり大雨が発生するという、寒冷低気圧の特徴を理解していると、よりよいと思います。
暗域が渦上の雲の南に回り込み(つまり南東象限に向かって)、そのために平島上空の西側に乾燥空気が流れ込んでいます。
②
相当温位の分布をみると、平島の東側にある330Kの領域がくさび状に入り込んでいるのが気になりますが、風向を考えるとこの領域が平島に大雨をもたらしているわけではなさそうです。
平島に風を吹き入れている西側を見ると、330Kの領域挟まれて333Kの細長い領域があります。
この空気が平島上空で収束・上昇して大雨をもたらしていると考えられますので、こちらを答えます。
風の分布は、平島の東と西側でやや風向が異なり、その異なり方は北側に行くにつれて大きくなっています。
風向は収束する方向に変わっていますので、風向を示したうえで収束していることを答える必要があります。
この収束が空気の上昇をもたらし、大雨を発生させる要因となっているためです。
(2)
これは読み取りです。
同じ図の中に平島と内之浦がありませんが、図9の緯度経度を読み取ってプロットします。
ここでは0㎜の線を探して、何本内側になるかを数えていくと間違いにくいです。
また、極値を見つけてその値から辿っていくのも有効です。
等降水量線は、10mm刻みで最大50mmまで引かれていることを覚えておきましょう。
(3)
穴埋めです。①②は引き算を、③は割り算を間違えなければ正答できます。
問4
(1)
①
温度風ベクトルが大きければ大きいほど上層と下層の間(層厚)の水平温度傾度が大きくなります。
つまりその分温度移流が大きくなることになります。
(より正しくは、下層風、上層風、温度風で作られた三角形の面積が大きいほど温度移流は強くなります。水平温度傾度が高く、風も強いためです。)
図10を見て、950hPaと700hPaで温度風ベクトルの三角形を書いてみましょう。
小さいのは21時の方になります。
②
北半球では温度風ベクトルの右手側で気温が高くなるため、北側が気温が低くなります。
理由は解答例の通りです。これは知識問題ですので、わからない場合はテキストを見直すと丁寧に書いてあります。
(2)
①
内之浦上空ですので、それを間違わないように読み取ればよいです。
相当温位の極小点が660hPa付近にありますので、上空に向かって相当温位は低くなっています(660hPaまで)。
湿数は下層の方が相当温位が高く、660hPaに極小点がありますので、やはり下層ほど湿潤であることがわかります。
これに留意すると、後は読み取りです。
地表付近の線が込み合ってわかりにくいですが、解答と照らし合わせれば理解できると思います。
②
問題文指定の領域では、相当温位と湿数の分布は似通っており、相当温位が高いところは湿数が低い(つまり湿潤)ことがわかります。
③
相当温位の極小点が660hPa付近にありますので、上空に向かって相当温位は低くなっています(660hPaまで)。
このような状態を対流不安定といいます。
④
水蒸気の供給を相当温位、湿数、風に言及して述べる問題です。
下層の暖湿空気が強い東風によって運ばれてくることで、水蒸気が供給されているという状況を示しましょう。
(3)
地形は地形図を見て明らかですね。
鉛直流というのは地形による強制上昇の効果として発生しているものだと思います。
その他の選択肢は、どれもメソモデルの式で考慮はされているはずですが、局所的な計算を行うことのできるメソモデルにおいて、その他3項目はスケールがやや大きい現象のようにも思えます。
また、メソモデルは静水圧平衡の式を用いていないというモデルですので、ある種、鉛直流を正確に表現することに強みのあるモデルとなります。
よって影響の大きいものをもう一つ選べと言われると鉛直流になるものと思われます。
(4)
過去問でも何度も出ている形の問題になります。
山岳の風上側で地形に沿って空気塊が上昇するということを示しましょう。
(5)
解答例の通りですが、これは気象庁のHPに詳しい説明があります。
専門知識の問題でも出てくるため、復習しておきましょう。
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