【寄稿】気象予報士試験第54回実技試験(令和2年度第1回)実技2 解説

本稿は筆者Bearringの寄稿になります。

留意事項等は下記リンクページをご参照ください。

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問1

(1)

穴埋めですが単位の変換や定規での計測が多く時間がかかります。

②は黒点間の定規で距離を測り、それを比例式で計算します。

km単位ですから、「緯度10度の長さ:1110km=図った長さ:x」

で計算します。

280kmです。

計算テクニックですが、2点間の距離÷緯度10度の長さで割合を先に計算し、それに1110kmを乗じる方が早く、計算も楽なことが多いです。

④は2の回答が正しくないと間違えます。距離は280kmで、速度は20ノット(時速37キロ)ですので、280÷37=7.6です。7.6時間後ですから、25日の午前4時半過ぎとなります。整数で答えるため5時が正解です。

ノットを持続に変換する際には、カイリをkmに変換するときと同じく1.85を乗じて計算します。(1.851の1まで計算が必要だった過去問はないと思います)
 

⑦は指示通り台風中心から1000hPaの等圧線の南東側に線を引き、その距離を測ります。長さはおおよそ北緯20度から30度までの緯線の3割程度ですから、600×(3/10)で180カイリです。

⑪は鞍部といいます。これは知識ですね。

等圧線を立体的に見ると馬の鞍のような形になっており、南北の高気圧の間はU字型にへこんでいます。

そして東西の低気圧の間は⋂方に盛り上がっています。

よって風向が変わっている部分はこの鞍の上から右、落ちていく部分ですから、「低下」が答えとなります。

(2)

図2を読み取ります。風速分布は台風が北東方向に進んでいることを考えると、進行方向右側で強くなっています。

これは可航半円と危険半円の知識を問う問題です。

風速の強さは、下層では中心付近が最も強くなりますので、その周辺を探すとすぐ東に80ノットの旗がありますので、これを答えます。

相当温位分布はたった15文字ですから、中心部の相当温位が最も高い極大値となっていることを答えます。

(3)

2つの気圧の高い領域に対応する下層の温度分布は図4を見ると、ちょうど地上天気図で気圧の尾根となっている位置に、下層の気温の谷があります。

気温が低いので気圧が高いという関係になっていますね。

位置は単純に読み取りです。

軸の傾きの方向はトレーシングペーパーを用いて地上の高気圧と比べると北東側にあります。

よって傾きの方向は北東側になります。

なぜ北東側に傾くかというと、北東側が気温が高くなっており、「層厚」が厚いためです。

図4を見ると、西側の低気圧ははっきりLスタンプがあり、沿海州のものはないため、沿海州の低気圧のほうが背が低いことがわかります。

同じ1020hPaの高気圧ですが、沿海州のものの方が気温が低いため、その分層厚は薄くなります。

下層で低温なため層厚が薄く、その分背が低くなっていることが理由となります。

(4)

卓越とは簡単に言えば一番多い風向と思っていただければよいと思います。

ざっと見ると850hPaでは東、300hPaでは西側の2つの旗が南なので南、北緯40度付近では南東が卓越していると思われます。

そもそも300hPaのほうは45度の間で解答しますので、南を選ばないと西を選ぶことになり、明らかにおかしいです。

温度移流は上空に行くにつれて東⇒南と風向が「時計回り」に変化していますので、暖気移流です。

トラフは等高度線の低気圧性曲率の大きいところと、風向が示されている図では風向をもとに決めます。

今回は両方ともわかりやすいため、北緯40度・東経110度付近の閉じた等圧線から、北緯30度・東経120度の大きな曲がりのあたりまでがトラフです。

この時、トラフの西側では北西風が、東側では南西風がそれぞれ卓越するように線を引く必要があります。

トラフの前面では風速が大きくなり、速度発散により下層から空気が上昇してきます。

下層の空気は相対的に湿っており、これが問題指定の雲域を作り出している要因です。

トラフ前面は風速が早くなり、上昇流域となり、正渦度移流域です。

これに沿って低気圧発生の際の木の葉状雲なども発生します。

そしてリッジの形に強風軸があり、下層から上昇してきた風がこの強風軸の偏西風に流されるため、低気圧の北側の雲はバルジ状になります。

問2

(1)

表の穴埋めですね。

ほとんどの問題はトレーシングペーパーを活用し、あてはめていくだけです。

★の部分は25日21時のものを参考に書く必要があります。

26日21時には、50ノット以上の領域は中心の北西側から南東側にかけて弧を描くように分布しています。

25日21時の記載を見ると距離情報もあった方がいいでしょう。

とはいえ時間との戦いだともいますので、本番ではざっくり計測にならざるを得ないかと思います。

距離を書かないで1点減点されるか、のちの5点問題に手を付けられずに時間切れになるか、そういう選択も迫られると思います。

やはり最初にざっくりと問題を確認しておくべきですね。過去問では問5に防災事項を答えさせる問題がよく出ており、時間があまりかからない問題も結構あります。

時間が足りずに最後までいけないのが一番もったいないです。

(2)

こちらも穴埋めで、表から答えの文言を持ってくる異なります。

一点、dについては850hPaにはほかの解答欄の解答と異なり、明確に暖気核という言葉はありません。

暖気核とは気温の極大点ですから、ここでは図11の相当温位の極大点があることを理由に暖気核があると解答してよいと思います。

もちろん厳密には違うのでしょうが、500hPaに暖気核があり、850hPaにないということは台風の構造を考えるとありえません。

(3)

これは一番簡単な前線解析ですね。

等相当温位線集中帯の南縁です。

相当温位線を見ると、閉塞していて寒冷前線はどのあたりに書かれるのか難しい感じがしますが、問題では温暖前線に該当する部分だけを答えればよいので、基本に忠実に書きましょう。

(4)

2つの要因を図11と図12に基づき答えます。

図11は相当温位と風ですので、暖湿空気が南風により運ばれて収束することを記載します。

解答例では温暖前線のところとありますが、ここに風向のシアがありますので、確かに数即しています。

図12は地形図ですので、地形による強制上昇が答えとなるはずです。

太平洋側の(山岳の)南斜面にぶつかることで上昇することが答えです。

問3

(1)

穴埋めは特段難しいことはないでしょう。

風速が一時極端に弱くなり、その後すぐにまた強くなったため、大牟田は台風の目が通ったと考えられます。

そこが最接近の時間(6時30分)です。

⑫~⑭は目分量で本当に若干といった感じです。

厳密に平均値を出す時間はとてもありませんので、目分量で見るしかないでしょう。

気温は10時以降高くなっていますが、最接近の前後と指定があるため、ここは含めないのでしょう。

(2)

この位置を厳密かつ理論的に説明することは不可能ですが、私はまず低気圧性循環をおおむね見つけ出した後、その辺りに円を描き、可航半円と危険半円を風速の強さで分けるように線を入れて、円を二つの半円にします。

その半円の中心からやや危険半円よりとなるような位置に決めています。

今回守らなければいけないのは、大牟田の東側をとるような進路にしなくてはいけないことと、6時と7時の線の間に大牟田が入っていることです。

この二点を守っていれば大きな失点にはならないはずです。

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