【寄稿】気象予報士試験第55回実技試験(令和2年度第2 回)実技1 解説

本稿は筆者Bearringの寄稿になります。

留意事項等は下記リンクページをご参照ください。

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問1

(1)

恒例の穴埋め問題です。

山脈の風上側に気圧の尾根ができるのは今回に限らず一般的な知識として覚えておきましょう。

風が山を越えられず、山のふもとにたまってしまい、気圧が上がることがその要因です。

気圧変化傾向は前3時間、過去天気は9時、21時発表の天気図では前6時間です。

(2)

温度風ベクトルは下層の風ベクトルから上層の風ベクトルに向かう矢印を書くことで求まります。

今回、下層は500hPaで南風で25ノット、上層は東風5ノットですから、南風ベクトルの先端から東風ベクトルの先端に矢印を延ばすと、北北東の風26-7ノットになります。

温度風ベクトルの右手側、今回は西側が暖かいという関係がありますから、回答はアになります。

今回は西が暖かく、東が冷たいため、温帯低気圧ではありません。

また、周辺よりも気温が相対的に低いため、熱帯低気圧でもありません。

これは上層ほど気圧の谷が明確になっており、気圧の谷の軸も鉛直に立っており、かつ周囲より気温が低いため「寒冷低気圧(寒冷渦、切離低気圧)」が正解となります。

明確な低気圧ではなく、低圧部ですが、特徴はまさに寒冷低気圧のため、閉じた等圧線がなくても寒冷低気圧と呼ぶらしいことを覚えておきましょう。

(3)

図1では温帯低気圧はまだ閉塞していませんから、その高緯度側に強風軸を探すことになります。

今回解答用紙の範囲内で温帯低気圧の近くにあり、80ノット以上の線が引けるところは一つしかありません。

比較的見つけやすい東側の140ノットの等風速線を起点として、入れ子状になっている等風速線の長軸を通して強風軸をひくことができます。

(4)

エマグラムを見ますと、逆転層の下方はおおむね北寄りの風、上方はおおむね西寄りの風となっており、上方の方が風速は強いです。

これがそのまま解答となります。

まず、上端の温位は、290Kと295Kの等温位線の間に、約7.5:2.5で按分したあたりにありますので、293-294Kが正解となります。

また、この前線面が等温位面であるとの仮定がありますので、逆転層の上端から、乾燥断熱線(等温位線)と同じ角度で850hPaまで線を引き、その気温を読み取ればよく、温度は7度となります。

なおこれはこの前線における前線面で850hPaの高さの気温を求めており、オサンの上空の気温ではありません。

高さが3039m、地上低気圧中心からオサンの間の距離は定規で図って計算してみると450kmですから、高さ÷距離は約1/150となります。

よって150が正解です。

問2

(1)

トレーシングペーパーに写し取り、方位を見ると北東に移動していることがわかります。

移動の速さは大体540カイリを12時間で移動していますので、大体45ノットです。

私は5ノット刻みであれば定規で大体のアタリをつけて、距離を出すための比例計算を省略してしまいます。

今回は緯度10度で600カイリのところ、移動距離はその9割分ほどだとアタリをつけて600×0.9=540カイリという形で概算しています。

また、12時間で緯度10度を移動する速さは50ノットなので、50ノット×0.9でも45ノットです。

(2)

a.最も近い等高度線は5640mの線です。しかし、解答例では5620mとなっています。

しかるに出題者としては、問題文の指示に10の倍数との指定があることから、等高度線の値ではなく、正確な値を読み取ってほしかったということでしょう。

5640と5580線の間で、4:2くらいの位置にありますから、5620mが回答のようです。

b.前問で写し取った低気圧の移動を500hPa天気図に重ねると、高い方を右に見て、

c.等高度線を左側

d.高度の高い側から

e.低い側にまたいでいます。

f.aと同じようにははかり取り、aとの差を求めると100m

g.低く(高緯度側に)となります。

h.地上天気図で低気圧は1008から1000hPaになっていますので、絶対値だと「8」です。

i.8hPaは問題文の指示より64mで、500hPaでの差はfから100mですので、「大きい」

j.高度が下がるということはその分だけ層厚が薄くなっています。層厚が薄いということは気柱の平均気温は低いことを表しますから「下がる」となります。

(2)

この閉じた等温線は、6度線と9度線の間にあり、南側には寒気核を表す「C」があります。

ということは、9度から一度気温が下がってこの等温線があることになりますので、この等温線は9度になります。

前線解析は、寒冷前線は等温線集中帯の南縁にそのまま書けます。

これは南西風と北西風のシアや700hPaの上昇流域との関係から見ても整合的です。

一方温暖前線は難しいですが、等温線集中帯の南縁と考えると6度線に沿って書きます。

どこまで伸ばすかは難しいところですが、解答欄の右端にある矢羽根がこの6度線の南北で南と南東風でシアがありますから、このあたりまでは温暖前線があると考えてよいと思います。

解答例よりも伸ばしてしまってもそれ一発で×にはならないと思います。

(3)

勝浦での通過時刻は風向の変化、気温の上昇に着目すると18時と19時の間であることはわかりやすいと思います。

まだ通過していない地点は、

御前崎では、風向が南寄りになり、気温が上昇したのが22時ですので未通過

石廊先では、同じ理由で22時過ぎころの通過ですので、未通過

八丈島は気温の上昇はありませんが、風向の著しい変化が16時ころありますので、通過していると判断

東京は風向の南寄りへの変化がないため24時においても未通過

銚子は風向変化は緩やかですが、21時時点において明らかに南寄りの風が吹いており、かつ後で解説する水戸でも通過していることも考えると、位置的に通過とみてよいでしょう。

水戸は明らかな風向変化と気温の上昇が18時過ぎにあるため通過です。

温暖前線が途切れない線とすると、水戸で通過して銚子で通過していないと、相当Rの急な曲がりを持った形になってしまうこともあり、総合的に銚子は通過と判断しました。

地形を見ると水戸と銚子の間には山岳もなく、それほど急な角度で温暖前線を曲げる要素もないと思われるためです。

(4)

シア―ラインは南西風とその他の風の間で引きます。

但し、温度の差で分けることを意識する必要があり、おおむね10度を境にして東西に振り分けます。

②これはわかりやすく、西側で風は弱く低温、東側では南寄りの風で高温ということが示せれば問題ないと思われます。

西側は風速が弱いため、風向も定まっていません。

問題文によると、総観スケールでは850hPaの温暖前線の位置から、地上前線も関東地方は通過しているとのことです。

一方、作図したシア―ラインは関東地方を通過していません。

前問から、この前線は潮岬、銚子、水戸を通過しているのに、御前崎や東京を通過していないため、地上の温暖前線は非常に湾曲したものとなっていると考えられます。

図11に地形図が示されていることから、これは地形によるものと考えられます。

または、前問で気温の分布も答えていることから、寒気が前線の北上を阻んでいることも考えられます。

これは過去に出題もある論点ですし、実務上もよくあることのようです。

前線は地形の影響を受け、山の斜面手前では進みが遅くなりますので、御前崎などの北にある山岳に阻まれて、山の南側では前線の進むスピードが遅く、平らな海から平地にかけて存在する水戸や銚子では前線が早く進んだため、通過しているものと思われます。

また、このシア―ラインの特徴としては、海岸線から内陸に進んでおり、上記の前線の進行と関連があります。

両方とも海側から内陸に向けて進んでいるためです。

よってこれらの関係を聞かれれば、関東地方のシア―ラインは、温暖前線であるということはわかります。

解答例では地上付近の寒気層によって北上が妨げられている。との修飾語があり、これは②で回答した気温の分布からこのようにしているものだと思います。

地形の図が与えられているのは、地表にある寒気が山岳の影響で、前線に押されても山にぶつかって北上できず、その影響で前線が進めずに滞っていることを解答させるヒントだと思われます。

寒気が山岳を超えて移動できず、その場に溜まってしまうという問題は過去に出題実績があり、関東地方の局地気象問題では定番の答えなのかもしれません。

(5)

図8をみると、海側から最大55ノットの南風が流入していますが、その北の相当温位の極大点では20ノットまで減速しています。

これは、ここで速度収束が起こり、行き場のなくなった強い南風が上昇流となっているということを示しています。

よって、相当温位321K以上の暖湿空気が最大55ノットの南風によって侵入し、それが25ノットにまで弱まることがこの場の特徴です。

相当温位が321なのか324なのか、風速が20なのか25ノットなのかは微妙なところですが、321と324の線の間にある領域であると考えると、321K以上という表現が、55ノットが25ノットに急減速していることを考えると25ノットが適切だと思います。

日本語の書き方次第で採点に幅があるとは思います。

この上昇流の生成にかかわるのは

一つは地形です。山岳による強制的な上昇が挙げられます。

もう一つは、前問で答えた温暖前線の影響です。強い南風が寒気に乗り上げたため上昇流となっているのです。

これはまさに温暖前線の構造そのものです。

問3

(1)

穴埋めですが、これは読み方がわかっていれば難しくなく、わかっていなくても天気記号やも問題文の「」内を見れば④、⑥、⑨以外は解答可能です。

時刻関係は「」内の書き方になっているため、読み取れば正答できます。

③は▽の記号がついている雨はしゅう雨性、ついていないのが層状性のため、しゅう雨性

④は知識問題ですが視程

⑥も知識問題ですが、氷あられ

⑧は二本線から三本線に代わっていますので、もやから霧に代わっています。ので「霧」が発生。

⑨も知識問題でこちらは積雪です。

雪のマークがあり、なくなった。とありますので、もしかしたら思いついた人もいるかもしれないですね。

(2)

知識問題です。

大気現象があるため、晴れや曇りではありません。

発生している大気現象を書きます。

よって帯広はあられ、釧路は霧です。

(3)

おそらく放射冷却による接地逆転層があり、地上では0度以下でもその上の層は0度以上だったということだと思います。

これを簡潔にまとめると解答例のようになるでしょう。

(4)

これは問題文の指示通り行えば正答できる問題でした。

まず、気温が0.5~1.4度までの時間は、21時から24時です。

この間で、積雪深の増分÷降水量を行うと、すべての時間で雪水比は0-1に収まりますから、すべてみぞれです。

これでこの3時間は確定です。

次に、20時と1時を考えます。

1時は雪水比は問題なく基準を満たしておりますが、20時は雪水比1ですので満たしていません。

1時は気温は満たしている時間と満たしていない時間があることになります。

問題文では、「また~」以下でこのような場合の発現時間は等分するとありますので、30分を上記の3時間に加算します。

3時間半ですが、回答は1時間刻みとの指示があるため4時間となります。

②溶け始めるのは2時からで、ここから先は降り積もることはないことがわかります。

よって、①時点の8cmから、最終の62cmをひいて22cmです。

密度が0.4との指示がありますから、雪が水になると0.4倍の高さになります。

よって、8.8cmが雨量換算の融雪量であり、単位を合わせて88mmとなります。

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