【寄稿】気象予報士試験第56回実技試験(令和3年度第1回)実技1 解説

本稿は筆者Bearringの寄稿になります。

留意事項等は下記リンクページをご参照ください。

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問1

(1)

こちらはいつも通りの内容です。

解説、基礎テキストと照らし合わせて理解できないところはないでしょう。

(2)

10ノットということは、1時間で10カイリ進む速度です。

3時間前は30カイリ西南西にあることになります。

緯度10度が600カイリであるため、30カイリはその5%です。

10度の5%ですので、0.5度が回答です。

名瀬の西南西には1016、1012、1008の等圧線と低気圧(1006)があります。

名瀬の東北東には1020の等圧線があります。

この等圧線の間隔から、名瀬は1016と1020の間にありますので、初期時刻で1017-1018hPaの間の気圧であることがわかります。

正確に按分すると、1017.4-5hPaくらいと思われます。

周辺気圧分布が全く変わらないという前提で、これを3時間巻き戻します。(緯度0.5度分西南西に移す)。

すると、名瀬は1016と1020の等圧線のちょうど間くらいの位置になります。

よって、3時間前は1018hPaであったと推測できます。

つまり1018hPaから1017.4hPaになったわけですので、正解は―0.6hPaになります。

名瀬では3時間で4.2hPa気圧が下がりました。

このまま持続するのであれば、12時間で17hPa気圧が下がります。

気象庁によると「低気圧の中心気圧が12時間で10hPa下がること」を急速発達としていますから、答えは「急速に発達している」となります。

問2

(1)

これは指定された範囲内で最も北または南にある指定された等温線の緯度を読み取るだけです。

経度線が曲がっているためわかりにくいかもしれませんが、経度線からの距離を測ることで、どの部分が1番北なのか南なのかはわかると思います。

(2)

進行方向前面の12度の北端は24時間で28度から37度まで9度の北上、

後面の0度の南端は37度から33度まで4度の南下

ですので、顕著なのは暖気の北上です。

温度傾度の時間変化の大きさは、等圧線の込み具合の変化で判断します。

初期時刻では、前面も後面も同じくらいの間隔でしたが、24時間後にかけて前面の等圧線が混み合ってきていますので、「前面」が回答です。

(3)

まず半径300kmの円を描きましょう。コンパスの出番です。

乾燥域は、12時間後には、南西側から中心に向けて侵入してきています。

これはいわゆるドライスロットですので、この低気圧は、この時点で最盛期を迎えていることになります。

解答としてはそこを要求されているわけではなく、見たままを書く「位置の分布」を答える問題ですから、単純に「中心の南とその南西にかけて広がって分布している」でOKです。

24時間後は、もっと単純に、300kmの範囲内で低気圧中心から南側に広がっていますので、そのまま答えればよいです。

(4)

地上低気圧中心と500hPaのトラフの位置関係を答える定番問題です。

35字と文字数が多いですが、模範解答は(北側)を入れてようやく35文字にしていますので、もっと短くても問題ないでしょう。

おおよそ強風軸の北側にあることが示せていれば大丈夫です。

(5)

前線解析です。

こちらはわざわざ図8(相当温位線)を参考にとありますので、この図を使いましょう。

等相当温位線集中帯の南縁ですので、333K の線が前線になります。

これをもとに850hPaの前線を解析しますが、基本的には、この線に沿うような形で書けば間違いありません。

解答の図では、等温線が示されており、15度の線が温暖前線・寒冷前線に対応していそうです。

この等温線に沿う形で、かつ低気圧中心付近は等相当温位線の解析で見つけた前線を参考にひくと、おおよそ解答例のような線となります。

なお、回答の図にある風のシアには従う必要があります。

特に寒冷前線の西端では、西風と南西風に明確なシアがありますので、この間は通す形にします。

風のシアを見ると温暖前線側はもっと北に書きたくなるかもしれませんが、前線の形は12時間で初期時刻と大きくは変わりません。

よって、図1での前線の形も参考に判断するということも覚えておきましょう。

問3

(1)

また穴埋めですね。

①②

は海上強風に相当する風ですから、34~48ノットの風(天気図上では35ノットの矢羽根から45ノットの矢羽根)を見つければ良いです。

東海沖にある35ノットと、沿海州の南部にある45ノットが見つかりますので、31~41度ですね。

上記の矢羽根までの距離を測りましょう。

④⑤

強い風に着目していますので、強風と、海上では風浪による高波に注意が必要です。

正解に暴風も入っていますが、風速の上では暴風(50ノット以上)は吹いていませんし、冒険はせずに強風と答えた方が適切だと思います。

極値は72㎜がありますので、そのまま答えます。

(2)

単純なトラフ解析ではなく、初期時刻から24時間後までの移動がその後も続くものとするとの注意書きがあります。

よって、初期時刻からトラフを追っていきます。

図2では初期時刻東シナ海にあった低気圧に対応しそうなトラフとして北緯40度東経120度から北緯28度東経125度付近に伸びる長いトラフが考えられます。

12時間後はトラフは南東進し、低気圧に西から近づいています。

24時間後ははさらに南東進し続けており、まだ低気圧との距離はありますが、初期時刻よりも近づいていることがわかります。

これがこのあとどうなるのか(地上低気圧とどんな関係になるのか)を回答する問題です。

まず場所は朝鮮半島付近でしょう。

また、初期時刻から24時間時点までの移動はそのまま継続とのことですから、南東進を続けることとなります。

そうすると、低気圧の北西側から近づいていき、低気圧との距離は詰まることになります。

よって解答例のように、朝鮮半島付近のトラフが、地上低気圧の北西側から南東進して近づいていくと予想される。が回答となります。

問4

(1)

これはいわゆる「にんじん状雲」を答えさせる問題です。

この雲ができる原理は、地上風の収束があって、上昇流が発生したところに、鉛直シアが強く、相対的に風速の強い上空の風があるために、風下に広がりながら流れていくことですが、今回は形状の特徴とありますので、解答例のように、

帯状の南西側ほど幅が狭い。でも、細い扇形でも何でもいいですが、形を答えることにフォーカスする必要があります。

(2)

こちらはいわゆる「かなとこ雲」のことを答えさせる問題です。

積乱雲が対流圏界面にまで到達し、それより先は安定層のため入り込めず、水平方向に広がらざるを得ない。ということが解答できていればよいと思います。

(3)

地点aでは上層にかけての風向の特徴が聞かれています。

このパターンは基本的には時計回り、反時計回りの解答となることが過去問では多く、こちらもその例です。

解答は上層に向かうにつれて時計回りに変化している。となります。

地点bでは風速の違いですので、上層の方が風速が強いことをそのまま答えると、それだけで制限文字数に達してしまいます。

地点aは地上で341Kです。

上空600hPaでは、330Kの線から5本目にある「L」の極小値スタンプのあるところですから、325Kです。

よって差は16Kとなります。

地点bは地上で343Kです。

上空600hPaでは、336Kの極大値とその右にある330Kの線の間の線に該当しますから、336K以下であることがまずわかります。

336Kから3本目の線ですので、333Kです。

よってその差は10Kです。

これはaとbの緯度だけでなく、その周辺の風向きと速度を見る必要があります。

aの付近は30-32度で南風で、aよりもその北にある32度の方が風速が弱くなっています。

bの付近は26-28度まで南西風で、地上風の速度は、26度で27度や28度よりも弱くなっています。

ここで、風速差があると、収束・発散があることを思い出すと、

aは南風ですので、その北側で風が弱くなっていると、余った風が速度収束により上空に逃げることになります。

bも同様に考えると、南側で風が弱いため、その風速差を補うために26度と27度の間では下降流により風が発散していることになります。

これにより、上昇流を生じているのはaの方であり、特徴が表れているのはこちらです。

風の特徴は上記の通り、南風が一様に吹いている中、その北側では風速が弱く、aの地点では速度収束が見られ、上昇流が発生していること。となります。

これをまとめて聞かれていない上昇流の部分を省けば解答例のようになります。

(4)

まず18時ですが、これは上層に向かって時計回りに風向が変化していることを答える問題です。

暖気移流があることを問いたい問題ですね。

次に0時30分ですが、こちらも寒気移流を答えさせたい問題ですので、回答の前半は上記と同じく反時計回りの風向変化を答えます。

追加の解答として「前線面の存在を示唆する高度を指定してその変化」も答える必要があります。

寒冷前線は北西からの風が吹いており、その南の暖域は南寄りの風が吹いています。

前線面は寒冷前線による寒気によって、暖域の空気が持ち上げられているところの境目ですので、北~西の風と、南成分の風向を持った風の境目が前線面になります。

ここでは2.5km付近で0時半の風向は西から南西に変わっていますので、ここが前線面と考えられます。

最後の「その変化」とは、2.5kmまでは北~西の風だったが、それより上空では西南西風(南成分を含んだ、もともと暖域にあった空気)となっていることです。

(5)

図6と問2(5)の解答から、鹿児島を前線を通過する時間は初期時刻から12時間後付近(21時ころ)ということがざっと把握できます。

このあたりで風とと気温の変化を見ると、21時に風速が10ノット以上早くなり、、同時刻に気温の上昇が止まっています。

温暖前線南の暖域では風が強くなりますから、ここが温暖前線の通過時点と思われます。

理由は上記の通りですが、通過したと判断される最初の時刻ですから、通過後の一番最初の時刻(風が変わった後、気温の変化も止まった後)となります。

これまでの過去問で寒冷前線の通過を答える問題では、気温の急低下が始まったときというものがありましたが、寒冷前線の場合は、暖気側から寒気側に入り、前線の定義が寒気と暖気の接する面のうち暖気側のため、通過後は気温が下がっていきます。

(前線通過した後に、前線帯を通って徐々に気温が下がっていき、寒気の中に入る)

一方温暖前線の場合は、その定義のため、通過後はもう完全に暖域に入っているので、気温変化が止まります。

(前線帯を通って気温が上昇していき、前線を通過すると完全に暖域の中)

このあたりで風向変化と気温の変化を見ると、22時に風向の急変があり、同時刻に気温は2度ほど急落しています。

これは寒冷前線通過時の特徴ですので、これが答えです。

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