不動産鑑定士資格の将来性(前編_不動産鑑定士の仕事の種類と今後)

不動産鑑定
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今回は不動産鑑定士資格の将来性について、現状の私案を書いていこうと思います。

不動産鑑定士の仕事

不動産鑑定士の仕事の場

現在不動産鑑定士が行っている主な業務範囲は下記のものが多いかと思います。

  • 公的評価
  • 課税
  • 補償、自治体による取得・売却
  • 売買等取引
  • 訴訟
  • 相続
  • 証券化
  • 時価会計

以下ではこれらの業務範囲別に今後どのようになっていくのか、2021年5月現在、各種企業のDX支援にかかわっている私の観点から想像ですが記載します。

仕事別将来性の考察

公的評価

公的評価は、主に地価公示、都道府県地価調査(課税関係路線価は下記参照)を指します。

これらは、地方部においても不動産の取引価格指標となり、また地価の過熱を抑制するという意味合いもあり、公的に重要な指標となっています。

また、課税目的の価格を算出する際も、地価公示の価格が目安とされています。

さらに、長期的に同じ地点のデータを図り続けていることから、データとしてのも貴重な情報です。

一方、地価公示の地点数やそれに要する鑑定コストは、常に国民からの厳しい視線にさらされています。

今後のIT化の流れにおいて、それを代替するような技術(米国におけるZirrowのようなAIで土地区画ごとに取引価格が査定されるサービス、取引価格がブロックチェーンで記録され、民間に広く公表されるような登記システム)が出てきた際には、規模の縮小や、役目を終えて廃止という可能性もなくはないと考えています。

しかし、この制度がなくなる前には、取引価格情報が記録され、それが誰でも見ることのできる登記簿のようなシステムが出てくることが前提と思います。

日本においては、個人情報に対する国民の意識が高いため、米国のようにこれらがシステム化されるのは、短期的には難しいものと思われます。

よって、しばらくは現状の制度が続くでしょう。

課税

課税目的の評価として、固定資産税路線価の設定や、相続税路線価の評価などの仕事があります。

これらは上記の公的評価の水準と平仄を合わせて評価されます。

また、課税のための客観的な評価は、この国の税制が続く限りにおいて必要であるため、この仕事自体はなくならないでしょう。

一方、パスコさんなどのGISデータ技術に強みのある事業者において、路線価敷設はある程度自動化されつつあること、固定資産税路線価、相続税路線価と複数の路線価があるものの、それらが統合されるということも考えられることから、仕事の数自体は減少する可能性があると思います。

また、国民のコストに対する目線は厳しく、先日も県内の固定資産税評価委託のコストが全く違うということで、委託費用の適正性が問題となっていました。

補償、自治体による取得・売却

道路用地などの収用や自治体事業のための補償のための仕事があります。

青森県で談合があり、社会からは厳しい目を向けられています。

このような場面でも権利を失う人に対しての適正な補償金額を算定するために鑑定評価は活用されています。

補償の場面では適正な補償が行われているかをしるニーズがあります。

また、自治体による不動産の取得や売却では、適正な価格であるかを証明するために鑑定評価が利用されます。

自治体では、不適切な価格での売買は地方自治法上認められていないため、鑑定評価が適切な価格を保証する役割を担っています。

こちらも選手村の件や森友学園の件での問題が取り上げられ、社会からの目は厳しくなっています。

しかし、これらは資格者による証明に代わるAIなどの査定方法は責任の所在をどうするかという問題もあるため、業務の性質上、すぐに代替ということにはならず、比較的長い間残り続けるのではないでしょうか。

当該業務は、公的団体による公共性の高い職務であるが故、この仕事がなくなるときというのは国の地方自治のあり方や地方公共団体の在り方、概念そのものが変わるとき、あるいは、誰もが信頼できるAI査定サービスが誕生したときでしょう。

そのような転換点が来ることは現時点では想定しにくいですし、誰もが信頼できる査定サービスにおいても、補償の場面での個別性の高い補償内容を反映した査定が可能になるにはまだまだ時間がかかるでしょう。

売買等取引

売買取引における価格査定は現在でも不動産業者が仲介業務の一環としても行っています。

この仕事には法律的な独占性がないため、(本来は鑑定士が鑑定を行うべきでしょうが、不動産取引も私的取引のため、契約自由の原則からいくらの値段をつけてもよいので)AIによる価格査定で満足される方は今後増えていくでしょう。

そうなるとこの分野では、価格査定というよりも、その不動産に関して、最高の収益を上げるにはどうしたらよいかなどのコンサルティングを行う能力が求められるように仕事の性質自体が変化していくのではないかと思います。

不動産価格の専門家として、利活用に関する助言を行う等、評価に付加価値をつけていくことが求められると思われます。

訴訟

訴訟においては、双方の提示する賃料や価格について、法廷で提出する裁判資料としての鑑定評価が求められます。

このケースでは、複雑な法律関係の中で、対象不動産の価格等を評価する必要があるため、評価に関する個別性や複雑性が非常に高くなりがちなため、人間としての鑑定士の能力を活用する機会が最後まで残るものと考えています。

複雑な法律関係を解釈し、それを踏まえた適切な評価額を算出し、根拠を説明することが引き続き求められていくでしょう。

この分野でのAIの活用は、物件調査に関するRPAツールの活用など、鑑定士の能力をを補助するためのものが主となると思われます。

なお、相続に関する国税局との関係においてもこの項に記載の通りと思います。

相続

相続の際に、特に相続人間で適正な相続財産の分配を行うために鑑定評価が利用されることがあります。

不動産は共有の状態になると、処分の困難性が高まりますので、不動産を共有の状態にせずに分配するために、納得感のある評価を行うことは有益です。

この場合も法律に強制された評価ではありませんので、売買同様コンサルティング的な能力が今後は求められていくことになると思います。

弁護士・司法書士の先生方とのコミュニケーション等や誠実性が引き続き求められるでしょう。

証券化

証券化においては、収支のデータなどがそろっており、データのシミュレーションや解析を行いやすい環境にあり、さらに継続して同じ物件を評価することになるため、評価の作業の効率化が行いやすい状態にあります。

よって、AIによる証券化不動産の算定ツールのようなものができてくれば、その評価自体はかなり効率化されることになるでしょう。

今後証券化不動産はどんどん増えてくることが想定されますので、不動産鑑定士はこれらの効率的なツールを使いながらより多くの不動産を評価することになると思います。

この仕事は資本主義社会が続く限りなくならないと思います。

また、仕事の内容としても、継続評価に要する時間がより短縮化されることで鑑定士の負担が減るという方向に向かうでしょう。

AIと人間の理想的な共存がしやすい環境かと思います。

時価会計

時価会計目的では、今後のIFRSでは時価会計が推進されていく報告であることもあり、不動産も時価評価が推進されることになります。

不動産の時価について、観察可能なインプットという概念が時価会計上はありますが、この観察可能なインプットのどのレベルに不動産鑑定評価が位置づけられるのかにより、この分野での仕事の量は未知数です。

公的評価やAI査定のようなレベルの評価でいいのか、専門家による評価が必要なのかは、今後の会計基準の公表が待たれるところかと思います。

特に、この分野は公認会計士の監査業務も自動化が進む中にあるため、不動産鑑定士の業務についても、自動化が進む分野になるかと思います。

会計の分野は鑑定評価基準の改定に比べ、ショートスパンで新しい基準が検討・公表されていますので、今後の動向を見守る必要があるでしょう。

後編に続きます。

リンクはこちらから

不動産鑑定士資格の将来性(後編_不動産鑑定士はAIにとってかわられるか)
不動産鑑定士資格の将来性とAIによる代替について、後編です。

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