0円評価をする勇気

不動産鑑定
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様々な不動産評価の依頼の中で、通常の社会経済情勢の下でこの不動産をお金を払って買う需要者はいないだろう。という物件もあります。

一方で評価人としては、実際にモノとしては不動産が存在する以上、

  • 値段を下げていけば誰かしらは買うであろう、
  • 建物価値はゼロでも土地値くらいにはなるだろう
  • 依頼者にこの物件の価値は0円ですと伝えるのはいいにくい

等様々な理由はありますが、評価額ゼロという評価書をなかなか見ることはありません。

(ゼロ円評価となる場合には依頼を受ける際にお伝えし、謝絶するケースが多いのかと思いますが)

ここでは私がこれまでに出会ったゼロ円の評価となるべきと思われるケースを紹介します。

地上に建物が建っているものの、老朽化が著しく使用不能の状態にあり、取り壊し費用が土地値を上回るケース

特に地方部等で、土地の価格が低廉である場合にこのようなケースが見られると思います。

  • 旧耐震建物で老朽化が著しく、
  • 毎期の修繕費がかさみ、
  • 設備はエネルギー効率の低いもののまま改善がなされていないため、

維持管理や運営に要する費用がかさむなどの非効率が随所にみられる建物です。

このような建物は、購入者側としても、そのまま入居して使用することが経済的に不合理になり、上記の不具合を改善しようと思うとそれなりの投資額を要するものの、建物自体の築年数もかなり経過しているため、追加投資をしても何年もつかという懸念から、追加投資もされない建物です。

また、建物の取り壊し費用を見積もると、土地の価格を超え、取り壊し最有効使用とすると、価格がマイナスになってしまいます。

その結果、実際には建物価格0円、土地価格のみという価格設定としても、経済的にはマイナスになってしまうため、実際の取引に当たっては土地価格での売却も困難となると思われます。

よって、0円評価(あるいは土地建物一体としての減価を市場性を反映して厳しめに行う)が求められるものと思われます。

賃貸不動産でありながら稼働率が低く、毎期赤字が継続しており改善が困難なケース

賃貸不動産において、特に地方部や郊外部では、賃貸需要が十分になく、また対象不動産の老朽化・陳腐化のため、空室が埋まらないということが想定されます。

賃貸不動産の満室稼働の想定純収益に対し、経費率を3-40%とすれば、空室率が50%を超えるような賃貸不動産では、NCFがマイナスとなり、収益価格は0円になります。

賃貸不動産においては、現行の契約が存在する限り、勝手な取り壊しはできず、更地として活用しようとしても、賃借人の立退料や建物取り壊し費用が多額にかかることから、毎期継続して赤字のキャッシュフローを生み続ける不動産となってしまっても、そのまま運営を続けるほかないという事態になってしまいます。

このような場合、賃料の引き下げや積極的なリーシング活動により、稼働率が改善するのであれば、それらを反映したDCF法によるシミュレーションを行うことで収益価格を検討することが考えられますが、長期にわたりそのような状態にある不動産では、収支改善を図るのは難しいことも多いと思います。

よって、

  • 継続してマイナスのキャッシュフローを生み続け、改善が難しい場合
  • 毎期のキャッシュフローの赤字額が、土地値を数年で超過してしまう場合

等、明らかに現状の不動産に対して投資者がいない場合には0円評価が求められるものと思われます。

対象不動産の利用による収益が固定資産税を下回り、毎年赤字が発生するケース

このケースも上記同様で、毎期の固定資産税をキャッシュインフローあるいは利用価値により賄うことすらできない不動産は0円評価の余地があります。

後者の利用価値の検討に当たっては、代替的な利用方法のために類似の不動産を賃借する場合の賃料のほうが固定資産税負担額よりも小さくなるような場合が考えられます。

公法規制やインフラ未整備等の要因により、利用開始までに必要な投下資本が、利用開始後の土地価格を上回るケース

原野商法などの事例で多く見受けられる事例です。

自治体の固定資産税自体はかかり続けているものの、実際の利用にあたっては、インフラが未整備であることにより、利用のために支出する公共公益的施設の負担額を考えると明らかに採算が合わない土地が該当します。

私が見たケースでは、近隣の水道管から5㎞程度離れているケースでした。

最も近隣のインフラが整っている土地の価格は㎡あたり1万円程度、対象土地の大きさは500㎡程度であったことから、水道管の引き込みに対するインフラ整備が数千万になる一方、整備されても土地の価値が500万円程度になるというケースでした。

このようなケースでは、500万円の土地を作るために数千万の費用投下が必要であり、明らかに割に合いません。

よって0円評価となる余地が求められるものと思われます。

まとめ

基本的には、毎期赤字が発生し、改善の見込みが著しく低い場合や、最有効使用を実現するために必要な投下資本が最有効使用での価値を上回るケースは、事実上の価値はゼロ円と考えています。

マイナスのキャッシュフローを生み出し続ける不動産は資産ではなくもはや負債です。それにプラスの価値が付くことはないでしょう。

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