こんにちは!不動産鑑定士のKanvasです。
今日はゴルフ場評価で見た事例です。
ゴルフ場は原価法による積算価格と収益還元法による収益価格の乖離が最も大きい資産タイプの1つです。
- 積算価格 100億円
- 収益価格 5億円
という評価書が見られることもあります。
ここで、不動産の価格はその典型的な需要者が最も重視する要因を重視して決定することを思いだしていただくと、ゴルフ場の価格は収益価格をベースに決定するんだな。
ということは理解していただけると思います。
5億円の収益しか見込めない資産に100億円投資しよう!という人はいないですよね。
一方で鑑定業界では、評価額を決める試算価格の調整の際に、どちらかの価格を100%の調整割合として価格を決定することはまだ完全に浸透しているとはいいがたいのではないかなと思っています。
以前の記事でも、積算価格と収益価格の乖離が大きい不動産で、各試算価格の間をとって鑑定評価額を決定してしまうという事例をご紹介しましたが、ゴルフ場も極端ではないにしろ、このような事例が見受けられます。
一例としては、「収益価格を重視して、積算価格は参考にとどめて鑑定評価額を決定した。」と説明し、積算価格:収益価格=10:90や5:95として試算価格を調整し、鑑定評価額を決定している事例は、ふつうに目にするものです。
ただしゴルフ場では積算価格と収益価格の乖離が大きいため、わずかな重みでも価格への影響は多いくなります。
ここで上記の金額例に立ち返ると、10:90で調整した価格は14.5億円、5:95で調整しても9.8億円です。
後者は積算価格はかなり保守的に見て調整しているように思える割合ですが、それでも収益価格の倍近い評価額となってしまいます。
私は個人的には、典型的需要者が最も重視する価格を採用し、ほかの試算価格はその裏づけ的な立ち位置、あるいは、最も重視する価格で一部取り入れることが難しかった要因を調整するために使うものと考えています。
ご意見や皆様の考え方がうかがえましたらうれしいです。
良ければコメントお願いいたします。
※取引事例比較法の観点について
ゴルフ場の評価においては、取引事例比較法の観点も取り入れることが可能です。ゴルフ場の取引事例が「一季出版株式会社発行のゴルフ特信」などに掲載されるため、これらの1ホール当たりの価格を参考とし、相場観を得ることが大切です。
この比較の観点を、収益還元法の還元利回りに反映することで、より説得力のある評価が可能になります。
【不動産鑑定評価基準に関する実務指針 公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会P103】
国際評価基準において求める価格の中心は、日本と同様にMarket Value(市場価値) とされており、当該Market Value(市場価値)を求めるためには、不動産鑑定士が 必要と判断する「単一」又は「複数」の手法を適用することを求めている。 一方、平成26年の改正前の基準では、価格形成への影響の程度、正常価格を求める ための試算価格としての説得力の如何にかかわらず、原価方式、比較方式、収益方式の 考え方を反映した適用可能なすべての手法を適用することとされており、国際評価基準 と相違がある。 この結果として、対象不動産の価格形成に及ぼす影響がほとんどないと判断される 手法の適用にも、不動産鑑定士は一定の労力を費やしている。 上記を踏まえ、平成26年の基準改正においては、まず「方式」と「手法」との関係を整理し、鑑定評価の各手法が市場参加者の判断基準をどの程度反映しているか等の市場 分析を丁寧に行い、さらに三方式の考え方がどのように具体的に各手法に反映している かを確認することを通じて、鑑定評価の精度を維持しつつ、手法の適用に係る規定について国際評価基準との整合性を向上させることに念頭を置いている。なお、鑑定評価に おいては三方式の考え方を併用して正常価格を判断するものであるとする基本的考え方についての変更はない。
※マーカーは筆者
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