不動産鑑定評価と消費税

不動産鑑定

不動産鑑定評価においては、消費税は考慮外(税抜き)の数値を使って評価が行われます。

消費税の課税状況は事業者の売上規模等や選択している課税制度にもよるため、この結論自体には違和感はありません。

しかし、居住用賃貸不動産の場合には、すべてを税抜き計算しても経済価値を過小評価することはないのかという疑問があります。

本稿については、私は税理士ではないので、正確な結論は不明です。

ただし、今後も消費税は増える傾向にもあるため、どこかで鑑定評価上の取り扱いにケリをつけなければならないのではないかと改めて問題提起をしたい趣旨です。

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収益還元法

課税事業用不動産の場合

消費税を含めて考えたとしても、課税事業用の不動産に係る収益は収入では消費税分が預かり金的な性質として流入します。一方、支出では仮払金的な性質として流出しています。

支出は課税売上に対応するもののため、支出に係る消費税は問題なく売上に係る消費税から控除され、その差額が支払う消費税となり、消費税が最終的なキャッシュフローに与える影響はありません。

税抜きの場合も同じです。

よってNCFはゆがまないこととなります。この場合は何の問題もないものと考えています。

居住用不動産の場合

一方居住用不動産の場合、収入は非課税売上高となり、税抜き計算と税込み計算で結果がアンバランスになると思われます。

課税事業用では、収入も支出も両方ともに消費税が入っていたため、税抜き計算をしても単に消費税が取り去られるだけで済んでいたところですが、居住用不動産では収入では消費税がない一方、支出では不動産事業者は消費税を支払っているため、消費税を抜いた税抜き計算をしてしまうと不均衡が乗じてしまうのではないかという懸念があります。

税抜き計算

収入は非課税売上となりますので、仮受け消費税は発生しないため問題はありません。

一方で、支出は税込みの金額を支払うことになります。(維持管理費やPMフィーの支払いなど)

それに対してこの支出を税抜き金額で計上すると、NCFが過大計上されることになります。(本来は消費税金額分も賃貸事業を行う事業者が負担するため、それを計上しない分、実際の支出よりも小さな費用が計上されます。)

よって税抜き計算をすると、支出に含まれる消費税が収益価格を押し上げることになります。

税込み計算

収入は非課税売上となり、仮受け消費税は発生しないため問題はありません。

支出も実態に基づいた支出額が計上されるため、NCF自体はゆがまないことになります。

但し、消費税の計算においては、計算方法により、消費税の還付が生じることも考えられます。

その場合、税込みとしてしまうと、本来の不動産賃貸事業による純支出以上の支出を計上することになってしまうことには留意が必要です。

また、課税事業用と居住用不動産が一体となっているような場合には、どのように消費税分を勘案するかなど、説得力のある消費税の考慮方法の勘案が難しいということも課題です。

むすび

結局のところ、居住用不動産では、収入は非課税売上であるに対して、支出は自分が最終消費者となるため、消費税の負担が生じているという形になるため発生することがこの不均衡の原因となると思われます。

現状は税率が10%のため、まだ問題が大きくないと思われているのかもしれませんが、今後高福祉国家並みの20-30%等の税率となった際には、賃貸事業の経費率が、居住系と事業系で大きく変わり、最有効使用の判断にも影響するかもしれないことにを考えると、このあたりの論点整理は進めておく必要があるのではないでしょうか。

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