なぜ円安が急激に進むのか

科学・哲学

この一月ほど、円安が急激に進んでいる。

ツイッターのタイムラインを見ると、円安が進むことにより、輸入物価が上がり、国民の生活が苦しくなるというような記述も目立つ。

この急激な円安の進展は何が原因だろうか。

まずは日米の金利差拡大が世の主因と考えられるだろう。

基本的に為替は、金利の高い国の通貨ほど高くなる。

これは金利の高い国で資金を保有したほうが利息がたくさんもらえるためだ。

この要因に違和感がある人はいないだろう。

アメリカは利上げに踏み切り、今後も継続して金利を上げていくアナウンスをしているわけだから、ますますこの要因による円安は加速するだろう。

一方日本は、経済への懸念等から金利を上げることができないでいる。

その真因は私にはわからないが、このまま利上げをしなければさらに円安が進むはずだ。

次にこれまで有事の円買いといわれていたところ、ウクライナ機器ではそれが妥当しなくなったということだ。

最近ではむしろ有事のドル買いとまで言われている。

有事の円買いとは、何か世界的な危機があった際には、日本人が外貨で保有している資産を、いったん円に戻す動きがあったことから、危機⇒円買い⇒円高となってきたこれまでの経験則をいう。

今回のウクライナ危機では、これは起きなかった。

日本人は危機があっても外国資産を円に戻したいと思わなくなってしまったのだろうか。

昨今金融資産課税強化などをはじめとした岸田総理の発言が、金融資産の魅力低下を招いているという指摘もある。

たしかに岸田ショックという言葉も生まれ、世界経済から日本株の立ち直りは後れを見せ、さらに、一時日経平均株価は10%以上下げる等、日本の金融資産の魅力はどうやら世界に対して薄くなっているようにも感じられる。

このような要因から、日本の資産の魅力が減り、円安が進んでいるのかもしれない。

そうであれば、この要因によっても、何か金融資産の魅力向上となるインパクトがない限り、円安は進んでいくかもしれない。もちろんその他の国の金融資産に対する政策や、各国の経済・産業などの状況によっても大きく動くだろう。

この要因は日本経済、ひいては国の技術や新興企業、大学研究などの投資とも密接にかかわっているだろう。

最後は、デフレとインフレの関係によるものが挙げられる。

デフレ経済の国の通貨は高くなる。

これは、デフレとは、物の価値が下がる(通貨の価値があがる)ことを考えるとわかりやすいだろう。

つまり、円で持っておけば、金利はつかなくとも、円で買えるものの価値はどんどん下がっていくので、実質的にお金の価値が上がっていくのだ。

それならばゼロ金利であろうとも、円を持っておく価値はある。

しかし、近年では、不動産の価格も上昇し続け、消費者物価も直近で2%程度上がっている。(携帯電話料金の大幅な下げがあって2%なので、実態はもっと上がっているだろう)

要は日本はデフレ国家ではなくなっているということだ。

デフレでなくなれば、円の魅力とは何だろうか。

金利はつかず、物の価値も下がらないということは、円で資産を保有していると、どんどん買えるものが少なくなってくる。

運用しようにも、金融資産の価格が上がりにくい。

そうなるといよいよ円で資産を持とうという人は少なくなるのではないだろうか。

とはいえ円安には

  • 輸出企業の利益拡大
  • インバウンドの投資拡大

等の経済活性化効果もある。

これらの効果が複雑に絡み合うため円安がいいのか円高がいいのか、円の価値が今後どうなるかということは私にはわからない。

私の不安は、これだけ円安が進んでいるのに、日本の資産が買われないということは、今後将来的にも円の価値は魅力がないと考えられているのではないかということだ。

この流れを変える要因は今のところ見つからない。

追記

3月28日に日銀が連続指値オペを実施した。

これは指定した利回り(今回は0.25%)で国債を無制限に買い入れる措置である。

これにより、指定利回りで国債の価格が決定するため、長期金利の上昇を抑える効果があるとされている。

本政策により、日本と米国との金利に対する考え方が特に顕著に分かれた形となった。

米国は一度に0.5%の利上げの可能性も残しつつ、今後も段階的に金利を上げていく。

一方日本は買いオペを実施し、明確に長期金利の上昇はさせないという意思表示をしている。

これにより、3月28日は1日で2円ほど円安が進んだ。

政策動向が指標に反映されるスピードは昨今ますます早くなっている。

不動産鑑定士も、一般的要因の分析にあたってはより注意が求められるようになっていくだろう。

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