公共施設の再編、住民説明会に思うこと

こんにちは、不動産鑑定士のKanvasです。

先日、自治体が主催する今後の公共施設の在り方に関する住民説明会・意見交換会に出席してきました。

現在、各市町村では、総務省の指導の下、公共施設総合管理計画に基づく個別の公共施設に対する計画である個別施設計画を策定しています。

公共施設総合管理計画では、自治体の現状と将来を分析し、今後の財政見通しも踏まえたうえで公共施設の在り方をどうしていくべきかという方針を打ち出しています。これは平成28年度頃に各自治体での策定が完了しています。

そして今回策定している最中である個別施設計画では、公共施設総合管理計画にもとづき、個別の施設を今後どうしていくかについて、具体的な修繕・更新費も踏まえた実行計画が記載されています。

住民説明会では、この個別施設計画を策定するため、「この施設が今後廃止予定」という形で、具体的な施設の統廃合や移転集約などの計画が語られ、それらに対する理解を住民に求めるものでした。

私はこの問題について、当日もめることはないと考えていました。

なぜなら、事前に行われた公共施設総合管理計画のアンケート調査の結果では、当自治体の施設を今後維持していくことはできないことについて、住民は理解を示し、使っていない施設は廃止してもよいというポジティブな意見が多かったからです。

しかし住民説明会の場で、具体的な個別の施設名が挙げられると、そのアンケート意見はどこに行ったのか、反対意見があがります。

町全体としては、財政が苦しく、施設の廃止やむなしであるとみんなが理解しつつ、自分が使っている施設が廃止となると、それは反対するという形です。

典型的な総論賛成・各論反対の図です。

私は各住民がどのような意見を持っていてもよいと思います。

ただし、今回の件に関していえば一点、事前のアンケート分析から、仮説を持っておくべきだと思いました。今回でいえば、説明会において「時間」の概念はしっかりと出しておくべきでした。

アンケート結果では、比較的若い層(30代など)は、公共施設の廃止につき、使う機会がないので廃止してもよいという回答が多く、比較的高齢の層は、今後も利用したいと回答していました。

であれば、自治体側が持っておく仮説としては、今後施設を維持するとしても、50年のような長期にわたり維持する必要はないということが浮かびます。

当日反対の声を上げた方は70代くらいかと思いますが、20年後その施設を利用しているのでしょうか。統計的事実ではそれは怪しいと思います。(健康寿命を考えると疑わしいでしょう)

であれば、建設的な意見の出し方として、もし時間の概念を説明会でうまく共有していれば、反対意見を出すにしても、「その施設の廃止はわかった。しかしあと10年くらいかけて様子を見てくれないか。その間、必要以上の過度な修繕はしなくていい。」というような意見の出し方があったのではないかと思います。

このような回答であれば、自分が利用する間は効用を受けられ、必要以上の資産への投資を抑えられるため、自治体の財政へも良い影響があり、若年層としては、ここで節約された投資分は自分たちの世代に別の形で還元が受けられることになります。

昨今世代間対立が取り上げられるニュースも多いですが、このような考え方が、解決の一助になると思います。

総論賛成・各論反対は、どこで区別の線を引くかという難しさから、どのような分野でも起こり得るものです。しかし、その各論反対の際に、今回でいえば「時間軸」のような、新たな評価軸を導入することで、より建設的な意見の出し方というのを探ることも、このような施設の統廃合に限らず、社内の合意形成が必要な場面でも重要ではないでしょうか。

(また、今回はフルタイムで働く若年層が参加しにくい時間帯に説明会が実施されていたことは大変残念でした。均等に意見を取るためにも、みんなが参加しやすい時間に開催することが望ましいと思います。現代であれば、一部オンライン開催でもよいでしょう)


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