財務書類作成(減損)のための不動産評価に関する評価上の留意事項(試算上の留意点)

不動産鑑定

基本姿勢

固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態を指し、過大な価値を表示している帳簿価額を減額する会計処理です。

よってそこで求める正味売却価額は、対象となる資産の使用の継続ではなく、市場で売却した場合の回収可能額を求めるものとなります

したがって、正味売却価額における時価の価格調査は、実現性のある売却可能額を求める必要があり、対象不動産の市場性については、十分に留意する必要があります。

留意点

減損対象資産は特定の業務目的に供されている不動産が多いと考えられることから、とくに処分可能性の視点から収益性と市場性についての慎重な検討を要することとされています。

処分可能性の検討に当たって重視すべき視点として、収益性と市場性の観点が重要と考えます。

収益性

収益性に関しては、資料の制約等により事業収益による収益還元法の適用が困難な場合においても、業界動向等を踏まえ、収益性を勘案した価格調査を行うべきものされています。

よって、例えば収益物件の評価において、資料の不足等を理由として、収益価格の相対的信頼性が劣るため、積算価格により価格を決定するなどの対応は避けるべきです。

市場性

市場性の観点から現況使用に対する用途変更、改造、取壊し更地化とその費用と収益性の比較が重要となります。

市場性が劣る可能性の大きい用途限定ある不動産としては、大規模な工場などの総額のかさむ不動産や、ゴルフ場、ホテル等のうち収益力がその投資額に及ばない事業用不動産等が挙げられます。

これらについては、規模に応じた単価と総額の関係による減価や、収益力をもとにした投資採算価値としての収益価格をベースに判断を行うべきと考えられ、過大な投資額をフォローするための積算価格に過度に依存しない、市場性の観点を重視した視点を持つことが求められます。

各手法の適用上の留意点

原価法

原価法の適用における減価修正には特に下記の点に留意が必要です。

  • 特定用途、自社仕様建物であることにより、需要者層が限定されることによる原価
  • 収益性を著しく超える多額な投資がなされた経緯のある不動産に対する経過年数以上の減価
  • 複合不動産としての最有効使用との乖離による減価(取壊し費用との関連)

取引事例比較法

複合不動産の取引事例比較法は実務上の適用が困難とされているものの、指標として下記の事例を参酌し、価格の妥当性を検討することが有用です。

  • ゴルフ場であれば1ホール当たり取引価格水準
  • ホテルであれば1部屋当たり取引価格水準
  • 買い希望価格、売り希望価格の水準

また、土地の取引事例比較法の適用においても安易に課税上の価格、路線価水準、土地価格比準法の格差要因などを参考にするのではなく、当該要因により収益に対してどのくらいの価格影響があるのかを反映した適切な補修正率を考慮すべきです。

収益還元法

指針によると

用途面で現に事業の用に供されている用途が最有効使用であるか否かを検討する。

用途面からみて現在の事業の用途に供されることが最有効使用と判断される場合は、原則として、現事業による収益に基づいて適用する。

用途面からみて現在の事業の用途に供されることが最有効使用でないと判断される場合は、原則として、最有効使用の用途への転換を前提として、転換後の事業による収益に基づいて適用する。建物等を取り壊し、更地化することが妥当と判断される場合は、収益還元法は、最有効使用を前提とした想定建物を前提とする事業による収益に基づき、土地残余法を適用する。なお、最有効使用の用途への転換や建物等の取り壊しに要する費用について考慮する必要がある。

財務諸表作成のための価格等調査に関する実務指針

と記載されています。

賃貸用不動産であれば、厳に賃貸されている純収益をもとに収益価格を算定し、賃貸以外の事業の用に供されている不動産であれば、当該事業から生み出される純収益をもとにした収益還元法を適用します。

なお、対象不動産が最有効使用の用途に供されている場合は、正常価格を求めるための収益還元法の適用となるため、会社の固有の経営状態による影響は考慮外とし、対象不動産の標準的な収益に基づいて評価を行います。

よって、会社が特定の高コストの関連会社が運営する電力事業の契約を行っている場合には、水道光熱費が一般的水準に比較して高額となっていることがありますが、これらは標準的な水準として査定します。

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