【寄稿】気象予報士試験第53回(令和元年度第2回)実技試験 実技実技1 解説

本稿は筆者Bearringの寄稿になります。

留意事項等は下記リンクページをご参照ください。

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問1

(1)

④は8方位と書いてありますが、()の後ろに「よりの」とありますので、4方位から選ばなければなりません。

エリア内には南西の風があり、周辺も南寄りの風が卓越していますので、回答は「南」となります。

(2)

低気圧中心が遠ざかっていますが、気圧は下がっていたという状況があり、直感的に違和感のある状態となっています。

しかし①では(1)の①東北東に②35ノットで進んでいるということを用いて回答しますので、まずは事実として「遠ざかっていた」ことを回答します。

こちらで①のところに書いた違和感を解消します。

前半部分とは気圧が下降していたことを指します。

この要因は、図1の低気圧に伴い南南西に伸びている気圧の谷に沿うように寒冷前線を書いてみるとわかります。

この時間、鹿児島には寒冷前線が近づいています。

寒冷前線が近づくと、周辺での上昇流(気圧の谷)がありますので、気圧は低下します。

よって、①で回答したように、低気圧の中心自体は遠ざかり、本来気圧は上昇するはずですが、その上昇量以上に寒冷前線の接近による気圧の下降が大きかった。

ということが回答になります。

問2

(1)

図3の赤外画像では低気圧中心の北から北東にかけて高気圧性の曲率を持った雲域が広がっています。これは白く輝いているため上層雲です。

問題文の指示通り、典型的な特徴を雲頂に着目して書く必要がありますので、「雲頂高度が高い」こと、「高気圧性曲率をもっていること(バルジ状となっていること)」に触れて回答します。

解答例の北縁が明瞭でというのはこれがジェット気流に対応していることを指しています。

(2)

12度の等温線に沿うことは、等温線集中帯の南縁に着目すると自明です。

15度線は南に離れすぎており、9度線はすぐ近くに12度線があるので南縁ではありません。

温暖前線は等温線に沿って書きます。風のシアはわかりにくいですが、前線の北と南で10ノット程度の差があります。

寒冷前線は途中までは等温線に沿わせることになりますが、そのまま沿わせると解答枠の西端にある北西風の北側に書いてしまうことになります。

これは寒気側の風ですので、この南側に来るように書く必要があります。

するとその南には等圧線が南に凸になっている部分がありますので、ここを通して書くことになります。

③④

こちらは読み取りと引き算です。5580m-13m×100hPaで4280mとなります。

秋田から12度の等温線の間の距離を破線に沿って測り、距離を計算するとおおよそ緯度3度分ですので、1110kmの3割で333kmとなります。これが三角形の底辺になります。

過去問はカイリやノットで答える問題が多いため、kmでという前問からの流れを忘れない様にしましょう。

次に高さを求めますが、秋田の600hPaの高度は4280mであることは計算済みです。

温暖前線の850hPa高度は図2を見ると1380m線と1440m線の間にありますから、1410mとみてよいでしょう。

この差は2870m(2.87km)となりますから、

333÷2.87=116

となり、10m刻みでは120が答えになります。

(3)

これも上記の逆転層の下にある逆転層を読み取るだけです。

上層に行くにつれて、気温の線と露点温度の線は離れており、気温は高くなっていますので、「湿度は低く、気温は高く」が回答となります。

(4)

秋田の雲底高度はエマグラムより約600hPaでその下は乾燥しています。

降水粒子は乾燥した層が厚ければそこを通過する間に蒸発してしまいますので、これが回答となります。

問3

(1)

関東の南海上には上昇流域が広がっており、上昇流の極値も複数あります。

一方低圧部は下降流の極値があり、西側から下降流域が広がっています。

湿数は関東の南海上では広く湿潤域が広がっておりますが、関東内陸部では乾燥しています。

ここまではその状況をそのまま書くだけでOKです。

この文字数だと解答例と同じに書くことは出来ないと思いますが、内容が間違っていなければ大丈夫だと思います。

私の合格時の再現答案は表現が解答例とかなり異なっていました。

低圧部には図7下で高温の極値が見られます。

これがポイントです。低気圧に伴う問題の場合、定型的に前面で暖気、後面で寒気と書きたくなってしまうところであり、過去問でもそのような解答が毎年のように出ています。

本問でも、まさにその状況が合致しますので、これが回答になりそうでもあります。

しかし、次の問題を見るに、本問は日本海低気圧による西風が山岳を超えて関東に吹きこんでくるということを答えさせたい問題と思われます。

よって、ここでは高温の極値があることが回答となります。

②の回答から、この高温の極値、そして図10の地形に着目すると、この極値は山岳の風下側になります。

よって風下の下降流によるフェーン現象が②の要因となります。

(2)

こちらは地上天気図のみを見るとわかりやすい気圧の谷があるため、そちらに沿わせた寒冷前線を書きたくなりますが、これは地形による「見かけの谷」です。

寒冷前線は図8の等相当温位線集中帯と図7の湿数線集中帯を見てアタリをつけ、地上風のシアを目安にして引く必要があります。

北緯30度付近では南南西と西南西の風のシアがありますので、ここを通す必要があります。

これは降水域の南縁にもあたるため違和感ありません。

なお、閉塞前線の閉塞点は上空の500hPa強風軸を渦度0線に沿って引き、地上前線との交点を求めてそこに作ります。

近くに上昇流の極値もあるため、閉塞点はここで決めて問題ありません。

(3)

上記強風軸が沿っているのは5520mの線です。

渦度0線そのままです。

(4)

まず、トレーシングペーパーで前線と鉛直流(図7)を重ねると前線付近は上昇流であることはわかります。

次に南側から風が吹いていることに注目すると、山地の南斜面で上昇流域であり、一部の下降流域は高い山岳の北斜面であることもわかります。

前問とは着目する風向が異なるため、引っかからないように注意しましょう。

(5)

東海地方は97

GSMは200

ですので2.06⇒2.1倍です。

指定通り地形図(図10)を見てみると、山地の南斜面に沿っていることがわかります。

MSMは分解能が高く、GSMでは表現されない小さな山もモデルで表現できます。

解答例では実際の山地の南西斜面を中心にきめ細かく予想しているとありますが、似たようなことが書けていれば問題ないと思います。

(6)

①②

こちらはグラフの読み取りだけ、平均降水強度は30分なので/hにするために2倍するだけです。

40mm/hが1k㎡に降りますので、その体積は40000㎥/hとなります。これを3600秒で割りますので、11.11111・・・㎥/hが算出できます。これが表面雨量指数の近似となる。と問題文で入っておりますので、小数点第一位までを解答すればよいです。

こちらでは③では40mm/hとした雨量を平均降水強度で計算したらどうなるかということを聞いていますので、80mm/hで計算します。

単純に③の2倍が答えになりますので、問題文は長いですが、22.2が答えになります。

22.2を表にあてはめると基準Ⅱの警戒となります。 

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