【寄稿】気象予報士試験第58回実技試験(令和4年度第1回)実技1 解説

本稿は筆者Bearringの寄稿になります。

留意事項等は下記リンクページをご参照ください。

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問1

(1)

定番の穴埋め問題です。

④は24時間ではなく、18時間ですので気をつけるポイントです。

⑥はこの低気圧についての事項を優先します。海上暴風警報の期間内(24時間以内)に18時間は含まれていますので、30ノット以上となります。(後の文の「吹く領域」と合わせて考えるとこの記述から拾うものと思われます。)

⑬前線帯は等温線が集中している領域を言いますので、その中で一番大きな値を探します。

(2)

輪島は1000hPaの等圧線と1004hPaの等圧線の間にあります。

よって、1000hPa超、1004hPa未満の気圧をとりえます。

つまり1000.1、1000.2・・・・・・1003.8、1003.9が小数点第一位までの表示でとりえる値です。

問題文では小数点以下を切り捨ててとありますので、

1000、1001、1002、1003となります。

(3)

これは距離を測って比例計算で距離を求めるだけです。

低気圧中心から真西に線を引き、距離を測れば回答にある300kmになります。

(4)

これは解答欄の文字列は多いものの、内容は難しくありません。

極値を探し、上昇流域、下降流域の別と温度移流が暖気移流か寒気移流かのどちらかを書くだけです。

低気圧中心との位置関係を聞かれているので、進行方向の前面・後面などの記載ではなく、低気圧中心の東側・西側などで答えます。上昇流域と下降流域はきれいに東西でわかれていますので、書きやすいと思います。

下降流の極大値は低気圧中心付近に+28がありますが、これではなく、西側の+38が正解です。等温線の形に注目し、この寒気の下降が温帯低気圧の発達に寄与していることを考えると、明確に低気圧後面にある+38を選ぶことになります。

極値の解答を含む鉛直流の回答方法として、「極大値〇〇の上昇流を伴う~」という表現は覚えておきましょう。

(5)

縮尺が違いますが、低気圧の位置を書き込んでみると、低気圧中心の北から東側にかけて赤外画像で白い、つまり背の高い雲域が広がっており、南西側は暗いため、こちらは下層雲が広がっていることがわかります。

おおむね図2の上昇流域では発達した雲が、下降流域では下層雲があることを示せれば問題ないと思います。

この手の問題では過去問回答を見ると、通例では、「高気圧性曲率を持ったバルジ状に~」という決まり文句がありましたが、今回は珍しくありませんでした。

書いても減点にはならないと思います。バルジは上昇流が強いときにできるため、この問題でも出題者の意図をはずしていることにはならないと考えられるためです。

問2

(1)

トラフ解析です。

まずトラフA(16日9時)ですが、結びついていた低気圧の進行速度が45ノットであることを考えると、12時間後には、緯度線で10度分ほど東に動いているはずです。つまりおおよそ北海道の南にあたりにあるのではないかというアタリを付けます。

もともとこのトラフは正渦度極大値⁺140を通っていましたので、これを軸に探します。

すると関東の南に⁺166がありますのでこれを通ると判断します。

当初トラフは5460m等高度線から南に延びていたことを考えると、5460m線から伸ばしたいですが、長さが足りません。

等高度線の曲率に着目すると明らかに5280mの線が南に湾曲しており、ここを外すことはできません。

よってこの気圧の谷を起点に、曲率の大きなところを通りつつ、当初のトラフの形に近くなるように弧を描き上記正渦度極大値を通るようにする解答例のように書けます。

次にトラフBの15日21時です。

当初5220mから南に延びるトラフであり、正渦度極大値+205があります。

これを起点に探すと、12時間後は+244がありますので、この付近が対応するトラフのある位置です。

等高度線は5160mのものが大きく湾曲しているため、ここが起点になります。

ここから気圧の谷をたどると、正渦度極大値にやや西に等高度線の凹みがありますので、ここを通って山陰まで伸ばすことになります。

最後にトラフBの16日9時です。

上記に留意すると、この時間帯も+254の正渦度極大値があり、その辺りに気圧の谷もありますので、ここを通すことになります。

負渦度域を避けるように等高度線の間隔が狭い部分にひくと解答例のように書くことができます。

(2)

たまに出題される表の作成です。

基本的にはトレーシングペーパーと定規を使い、解答例通りに埋めることは難しくないと思います。

(3)

こちらもレーシングペーパーと定規を使い、距離を測るとそのまま解答となります。

解答例では一文で書いていますが、迷うくらいなら2文に分けてしまっても問題ありません。

(4)

(1)で回答したトラフと、それぞれの時間の低気圧をトレーシングペーパーに写し取りましょう。

すると、12時間時点でトラフAは低気圧と重なり最盛期に入る形になります。

よって、最初の12時間はトラフAが低気圧発達に寄与していたことは間違いありませんが、12時間から24時間の間に発達への寄与はなくなっていくものと思われます。

しかし、この低気圧は前問で回答した通り、このまま衰退はせずにより深まっています。

この要因は、16日9時時点のトラフBの位置を見ると明らかです。

トラフBは低気圧の進行方向後面にあり、低気圧を発達させる条件を満たす位置にあります。

従って解答としては、初めの12時間はトラフAの前面で発達し、そのあとはトラフBの前面で発達することを示せば足ります。

(5)

また穴埋め問題です。

かなり図が見にくいので⑤は判別がつきにくいと思いますが、どこを軸に回転しているかと考えると、日本海北部か沿海州です。

わずかな差ですが、沿海州のやや東のように見えますので、解答例は日本海北部が正解となっています。

なお、このような地名が回答に必要で、かつ天気図で地形がみずらいときは、トレーシングペーパーに初期時刻の地上天気図などの地形がはっきり見える図から地形を写し取ることも有効です。

⑨は〇〇象限と聞かれると南東象限が思いつきますが、この位置だと暖湿空気は関係ありませんし、そもそも冬ですから違います。北西側から寒気が流れ込んでくることを考え、トレーシングペーパーを使って位置を確認すると南西象限といえると思います。

問3

(1)

こちらは風向のシアが比較的明瞭ですので、あまり迷わずに北緯・東経を解答できるでしょう。

循環中心は、南北で見ると西風と東風の間、東西で見ると南影と北風の間にあります。

風速が最大になる高度は図7上を見れば一目瞭然です。フラッグを探すだけです。

風向、風速は読み取るだけ、距離は、中心から約2度離れていますので、1110km×(2度/10度)で約200kmとなります。

風向の不連続線を書き入れます。これも北寄りの風と南寄りの風の間に書きますが、これは低気圧であることを考えると、暖域とその北側の寒気との間に書くべきでしょう。

よって北西風と南西風の間を通る様に書きます。

分布の特徴は、ひかれた実線の付近で、風速が周囲よりも小さくなっていることが挙げられます。

解答例では、極小との表現がありますが、似たようなことが書けていれば問題ないでしょう。

低気圧の中心付近における気温の立体的な分布を低気圧性循環の中心(上記解答)との位置関係に留意して分析すると、低気圧中心付近では、等温線が上空に向けて凸となっていることがわかります。

要は周囲よりも中心付近は気温が高いのです。

これは中心付近では風が収束し、上昇流が生まれ、湿った暖湿流が上空に向けて登っていくことからです。

そのピークは中心付近のすぐ東側にありますが、これは、中心の東側にこの低気圧の閉塞点があるためであり、上記の通り暖湿流は東から回り込む様に上昇していきますので、この部分でその理解を問うているわけです。

閉塞点は風が集まり収束し、上昇流の極値となっていることも多いです。

特に高度700hPaで顕著に表れているのはグラフを見れば一目瞭然でしょう。

図7上を見ると600hPaも顕著ですが、東西と南北を合わせてみると700hPaが正解となります。

(2)

時間帯は根室港付近での気圧を読み取り、一番小さくなっているところを選べばイとなります。

天文潮位は当該時間を図9に書き込めば50cm上昇していることがわかります。

気圧の低下量を見ると1010~949hPaになっていますので61hPaの現象です。

問題文より1hPaが1cmですので、10cm単位での回答だと60hPaです。

これは等圧線に、海上ですので摩擦の影響で地衡風から約15度くらいずれた角度で低気圧に向かって吹き込む風の矢印を書いてやるとわかりやすいです。

根室港は北西に向けてV字型ですので、根室港で北西風になるような等圧線の形を確認すればよく、回答は16日の5時です。

問4

穴埋めですが、わかりにくいですね。

①は図1の天気図を読み取り、8方位ですので南東

②は判断がつきませんでした。潮位が61cm上昇し、風も強いため、高波や高潮に注意が必要になることはわかりますが、大しけの定義である波が6mを超え9mまでという情報は見つけられません。

辞書による定義では、強い風や雨で海が荒れることを「大しけ」というらしいので気象用語以外として使われているのかもしれません。

③風だけでなく、吸い上げ効果についても言及されている以上、高波ではなく高潮が回答になります。

④釧路・根室では、図8のメソモデルの等圧線の凹み方を見ると、16日6時には低気圧の暖域に入っていそうです。

850hpa予想図の等温線をみると、根室は0度より暖かく、雪が降る温度(850hpaで山間部で0〜平地で-6度)ではありません。

これを踏まえると、低気圧の接近によって、気温が上昇(寒気側から暖気側に)する。

⑤その結果気温は図1ではマイナス1度だったものの、この時間には雨が降る見込みとなる。

⑥は雪崩に注意との文言から、「融雪」が入ることになります。

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