【寄稿】気象予報士試験第54回(令和2年度第1回)実技試験 実技1 解説

本稿は筆者Bearringの寄稿になります。

留意事項等は下記リンクページをご参照ください。

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問1

(1)

穴埋めは特に難しいところはないでしょう。

等高度線や等温線を答える問題も今回は非常にわかりやすく、⑪では5700と5760の間に旗が目立つ強風軸があり、⑭もこの付近で間隔が狭くなっているのは9度と12度しかありません。

(2)

日本の東にある方はほとんど停滞しているとのことですから、東に15ノットで移動している日本の南のGWとなります。

これは移動している低気圧に伴っている警報だからです。

(3)

こちらの強風軸解析は最もわかりやすいパターンのもので、180~100までの等風側線が入れ子状になっていますので、その円の最もとがった部分を通すように書けば完成です。

強風軸と等高度線の走向との関係に着目すると、等高度線から反時計回り方向にずれていることがわかります。

解答例は地衡風との文言がありますが、地衡風は等高度線に沿って吹くという前提からでしょう。

普通は問題文の指示にある言葉を使って回答を作りますし、試験の会場でとっさに出なくてもこれは問題ないのではないかと思います。

なお、強風軸の風速が下流の方が強くなっている場合にこのような等高線またぎが発生します。

(ジェットストリークの手前側では高度の高い側が発散の場、低い側が収束の場になるため、等高度線の高い方から低い方に風が流れます。)

低気圧発生段階の木の葉状雲は上空のジェット気流に沿って北縁が見られることが一般的です。

よって、雲域の北縁が強風軸とほぼ同じ位置にあることを指摘すれば足ります。

問2

(1)

こちらはエマグラムの読み取りです。逆転層を理解していれば難しいところはなかったと思います。

④は逆転層の上で相対的に乾燥していることから、選択肢の中だと沈降性逆転層が該当します。

(2)

逆転層の種類は、逆転層の中も含め湿潤であることから、前線性逆転層が回答となります。

なお、この手の読み取り問題は10hPaでどちらにするかを悩むのは時間の無駄です。

悩むようなグラフであればほぼ両方の数値が正解になるはずです。

問3

(1)

トラフの位置は見つけにくいですが、若干図6の5580m等高度線が南に凸となっている部分がありますのでそこにひきます。

5580mの等高度線との交点は120と130の経線の真ん中にありますので、125度が回答となります。

移動速度は距離を測ると420カイリほどに見えますので、それを12時間で割って35ノットが回答です。

トラフの書き方は人によって若干ブレがあることから回答の選択も広くなっています。

移動方向は見たまま真東ですので「東」です。

トラフは24時間後にかけてさらに見つけにくくなっています。

正渦度極大域を見つけないと、等高度線の曲率では引くことは困難なくらいです。

よって回答は「不明瞭になった」となります。

(2)

関東の北東部と南西部を見ると、等圧線が高気圧側から低気圧側に向けてへこんでいます。

これはこのあたりが周囲よりも気圧が高いことを示しています。(いわゆる気圧の尾根)

850hPa気温分布は図8を見ると、同じく関東の北東部から南西部にかけて南に凸となっています。

北側が気温が低い方ですから、下層(850hPa)の気温は周囲よりも低いことがわかります。

この2点を回答で指摘すれば足ります。

(3)

これはそれぞれ問題指定の0度線をトレーシングペーパーに写し取り、確認すれば足ります。

最初の12時間は北に動き、次の12時間で元の位置に戻るような形です。

暖気移流場、寒気移流場はそれぞれ等温線を温かい側から冷たい側に風が吹いているか、冷たい側から暖かい側に風が吹いているかを確認するとわかります。

今回は24時間後はやや見にくいですが、寒気側から暖気側に風が吹いており寒気移流、それ以外の時刻はわかりやすく暖気移流です。

(4)

前線解析では基本的に前時間の前線の形を踏襲します。

今回は地上天気図に書くため、この図の気圧の谷を通すような形で目星をつけます。

問題に従い、図8の850hPa図を見ると等温線集中帯の南縁は6度の線です。

温暖前線はこの線を参考にします。

寒冷前線は図8でヒントになるのは風向のシアと上昇流域の形、図7で参考になるのは、降水域の線です。

上記を参考に地上の風のシアと気圧の谷に注意して書くと解答例のようになります。

沖縄県付近にある低気圧を通るか、避けるか迷うかもしれませんが、避けるのは周辺の風のシアや周りの等圧線の形から不自然です。

問4

(1)

基本的な読み取りに高度の変換問題がくっついていますが、迷うことはないでしょう。

静水圧平衡の式などではなく、単に10hPaを10mとして計算するだけですね。

温度等も見たままです。

逆転層上端の気温は12時間前と後で両方とも気温は1度で変わりません。

850hPaより下の高度は、850hPaの高度面では同じですが、地上気温は明らかに低下しています。

平均的には地上にかけて気温は低下しているため、上記2点を回答し、850hPaの気温そのものは触れなくてよいでしょう。

(次の問題で融解層や凍雨の問題が出ていますので、850hPa以下の大気の気温が冷たいか暖かいかということに着目させるための問題かと思います。)

(2)

指定の時間の間で受信した信号の強さを図11で確かめると、2.4kmのところが強くなっていますので、これがブライトバンドです。

これはこの高度で気温が0度になることを示しており、ここを通過すると雪が融解し始めます。

雨は雪よりも5倍レーダーを強く反射することや、雪の結晶の周りの部分から融解は始まるため、解け始めの部分では雪の大きさで(雨粒より大きい)周りが水に囲まれている粒子としてレーダーを反射します。

よってレーダーには大きな雨粒があるように映ることになります。

(3)

これもレーダーの読み取りだけが問題です。

問題文の指示に従い、指定時間に大気下層の風向が変化しているところを探すと、0.9kmと1.2kmの高さが該当します。

この風向の変化をそれぞれ記載すれば足ります。

(4)

これはグラフを読み取って割り算するだけですね。

(5)

図7の地上天気図をみて水戸周辺の等降水量線を探します。

12時間後も24時間後も10㎜と20㎜の線に挟まれているため、問題文の指定から20㎜を回答します。

この線を探すときは0㎜の線からたどっていったり、極値の数字から等降水量線の値を推測するとよいと思います。

①から、12時間降水量は20㎜です。一方図12を見ると21時から24時の間に5㎜降っています。

これを控除して0時以降の9時間分の降水量を出すと15㎜となり、雪水比0.7を乗じると10.5になります。

よって11が答えです。

11cmですから、大雪警報ですね。

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