フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章⑩(地域分析⑨_同一需給圏)

不動産鑑定

やわらかい言葉で不動産鑑定評価基準及び留意事項の6章がつまり何を言っているのかをざっくばらんに、実務的な観点を踏まえながら解説・コメントしています。

(引用符で引かれた項目はすべて国土交通省の不動産鑑定評価基準及び不動産鑑定評価基準運用上の留意事項からの引用となっています。)

第一回はこちら(補足説明等込み)

フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章①
鑑定評価理論を学ぶ上でイメージがつかみにくく、最後まで暗記・理解が難航するのは第6章ではないでしょうか。 この連載では、やわらかい言葉で不動産鑑定評価基準及び留意事項の6章がつまり何を言っているのかをざっくばらんに、実務的な観点を踏まえながら解説・コメントするものです。(全文解説します。)

前回はこちら

フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章⑨(地域分析⑧_同一需給圏)
同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいう

①宅地

ア住宅地

同一需給圏は、一般に都心への通勤可能な地域の範囲に一致する傾向がある。ただし、地縁的選好性により地域的範囲が狭められる傾向がある。なお、地域の名声、品位等による選好性の強さが同一需給圏の地域的範囲に特に影響を与える場合があることに留意すべきである。

宅地の同一需給圏を決めるのは、その最終需要者の行動原理が主な要因となります。

多くの国民は給与所得者であり、会社への通勤時間や距離を考えて住宅の購入決定をすることから、都心や市町村の中心部までの通勤距離の範囲が同一需給圏となることが多いと思います。

一方、高級住宅街など、上記要因の影響が少なく、代わりに名声や品等、あるいは一つの区画の大きさ、街並みなどが一致するような範囲で決まるということもあります。

イ商業地

同一需給圏は、高度商業地については、一般に広域的な商業背後地を基礎に成り立つ商業収益に関して代替性の及ぶ地域の範囲に一致する傾向があり、したがって、その範囲は高度商業地の性格に応じて広域的に形成される傾向がある。また、普通商業地については、一般に狭い商業背後地を基礎に成り立つ商業収益に関して代替性の及ぶ地域の範囲に一致する傾向がある。ただし、地縁的選好性により地域的範囲が狭められる傾向がある。

商業地ではその商業施設を通じてあげられる収益の大きさにより同一需給圏の範囲が決定される傾向があります。

同じ都市の中でも、Aエリアに建てても、Bエリアに建てても、同じくらいの収益が挙げられるのであれば、その2つのエリアは購入の際に比較検討する対象となるため、同一需給圏の範囲ととらえてよいでしょう。

ウ工業地

同一需給圏は、港湾、高速交通網等の利便性を指向する産業基盤指向型工業地等の大工場地については、一般に原材料、製品等の大規模な移動を可能にする高度の輸送機関に関して代替性を有する地域の範囲に一致する傾向があり、したがって、その地域的範囲は、全国的な規模となる傾向がある。また、製品の消費地への距離、消費規模等の市場接近性を指向する消費地指向型工業地等の中小工場地については、一般に製品の生産及び販売に関する費用の経済性に関して代替性を有する地域の範囲に一致する傾向がある。

工業地では大工場地と中小工場地で同一需給圏の範囲の決め方が分けて記載されています。

大工場地では、輸送の利便性が重視されており、空港や港湾、高速道路のインター等の類似性により同一需給圏は決定される傾向があります。

この場合、その範囲は全国的な規模となりえます。

例えば、港湾近接型の大工場地であれば、北は北海道の苫小牧港、南は山口県の周南港など、どちらも購入の際に比較検討する対象となりえるでしょう。

中小工場地では、そこまでの大規模輸送の必要性がないため、むしろ消費地までの輸送の容易さが重視される傾向があります。

出荷や原材料の仕入れなどのコストが同じくらいのエリアが購入の際に比較検討する対象となるでしょう。

エ移行地

同一需給圏は、一般に当該土地が移行すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。ただし、熟成度の低い場合には、移行前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。

②農地

同一需給圏は、一般に当該農地を中心とする通常の農業生産活動の可能な地域の範囲内に立地する農業経営主体を中心とするそれぞれの農業生産活動の可能な地域の範囲に一致する傾向がある。

③林地

同一需給圏は、一般に当該林地を中心とする通常の林業生産活動の可能な地域の範囲内に立地する林業経営主体を中心とするそれぞれの林業生産活動の可能な地域の範囲に一致する傾向がある。

④見込地

同一需給圏は、一般に当該土地が転換すると見込まれる土地の種別の同一需給圏と一致する傾向がある。ただし、熟成度の低い場合には、転換前の土地の種別の同一需給圏と同一のものとなる傾向がある。

⑤建物及びその敷地

同一需給圏は、一般に当該敷地の用途に応じた同一需給圏と一致する傾向があるが、当該建物及びその敷地一体としての用途、規模、品等等によっては代替関係にある不動産の存する範囲が異なるために当該敷地の用途に応じた同一需給圏の範囲と一致しない場合がある。

建物及びその敷地の同一需給圏は、敷地の同一需給圏と一致する傾向がありますが、同一需給圏の項目で記載した対象不動産の使用方法が、地域の標準的な使用方法と異なる際などでは、代替競争関係にある不動産の存する範囲が敷地の同一需給圏とは異なるために、近隣地域の地域特性に応じた同一需給圏と、対象不動産の同一需給圏の範囲は一致しない場合があります。

要は一般住宅の同一需給圏と、マンション用地の同一需給圏は、同じ地域に存する不動産であっても異なるということです。

これは市場参加者の属性が異なるため、購入の際に比較検討する対象となるエリアが違うのは当然といえるでしょう。

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