フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章⑪(市場分析①)

不動産鑑定

やわらかい言葉で不動産鑑定評価基準及び留意事項の6章がつまり何を言っているのかをざっくばらんに、実務的な観点を踏まえながら解説・コメントしています。

(引用符で引かれた項目はすべて国土交通省の不動産鑑定評価基準及び不動産鑑定評価基準運用上の留意事項からの引用となっています。)

第一回はこちら(補足説明等込み)

フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章①
鑑定評価理論を学ぶ上でイメージがつかみにくく、最後まで暗記・理解が難航するのは第6章ではないでしょうか。 この連載では、やわらかい言葉で不動産鑑定評価基準及び留意事項の6章がつまり何を言っているのかをざっくばらんに、実務的な観点を踏まえながら解説・コメントするものです。(全文解説します。)

前回はこちら

フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章⑩(地域分析⑨_同一需給圏)
同一需給圏は、一般に都心への通勤可能な地域の範囲に一致する傾向がある。ただし、地縁的選好性により地域的範囲が狭められる傾向がある。なお、地域の名声、品位等による選好性の強さが同一需給圏の地域的範囲に特に影響を与える場合があることに留意すべきである

2.対象不動産に係る市場の特性

地域分析における対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有しており、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要である。あわせて同一需給圏における市場の需給動向を的確に把握する必要がある。また、把握した市場の特性については、近隣地域における標準的使用の判定に反映させるとともに鑑定評価の手法の適用、試算価格又は試算賃料の調整等における各種の判断においても反映すべきである。

対象不動産の鑑定評価額を決定するにあたっては、対象不動産に対する典型的な需要者の観点をもって判断することが重要です。

これは、試算価格の調整(第8章)で解説されますが、鑑定評価の手法の適用において、算定された試算価格のうち、どの価格を重視して価格決定を行うかという判断に影響します。

この、対象不動産に係る典型的な需要者はどのような人なのかということを判断するために、この市場分析が重要となります。

同一需給圏における市場参加者とは、対象不動産を買いたいと考える需要者の範囲を示しています。

市場分析のステップでは、その市場参加者がどのような属性なのか(不動産業者か、エンドユーザーかなど)、そして彼らはどういう観点に立ってその不動産の利用方法を決めるのか(収益目的か自用目的かなど)、その利用方法に当たっては、どのような価格形成要因(収益性、費用性など)が重視されるのかを分析します。

この分析結果は基準に書いてある通り、近隣地域の標準的使用の判定の際も、どのようか手法を採用するかという検討の際も、どの試算価格を重視するかという判断の際も、その判断根拠のよりどころとなる情報となります。

つまり、不動産鑑定士は対象不動産が属する市場に成り代わり、不動産の価値を提示する専門家ですから、その市場に参加する市場参加者の観点から価値判断を行わなければならない。ということです。

この基準のため、収益性が重視され、典型的な需要者はホテルを運営する事業者と考えられる物件で、費用性に基づいた手法である原価法を重視するというような、ちぐはぐな評価は許されません。

↓参考

複数の試算価格と鑑定評価額が乖離している鑑定評価書
不動産鑑定評価書で、積算価格、収益価格のどちらとも近似していない鑑定評価額で出ていることがあります。それは意味のある数字でしょうか。

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