鑑定評価基準によると土地の類型には、更地、建付地、借地権、底地、区分地上権が例に挙げられています。
これらをどのように区分し、判断するかというと、その宅地の有形的利用及び権利関係の対応に応じて分類するとされています。
財務書類作成に関する不動産鑑定評価の現場においては、建物の敷地となっている土地の評価を行うことがありますが、その際にこれを更地として評価する事例が見受けられます。
ここでは、建付地と更地の違いと、建付地の評価方法を説明します。
建付地とは
建付地は鑑定評価基準では「建物等の用に供されている敷地で建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地をいう」とあります。つまりマーカーでひいた2つの要件を満たした宅地が建付地となります。
一方更地は、「建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう」とあります。
大きくは、当該宅地上に建物があるかないかが大きな違いとなります。
建付地の評価方法
建付地は、建物等と結合して有機的にその効用を発揮しているので、建物等のとの関連において「最有効使用の状態にあるか否か」が評価上重要となります。
土地と建物は法律上はそれぞれ独立の不動産ですが、実際の機能上は一体としてその効用を発揮しているため、一体としての状態を前提として価格が形成されます。
よって、鑑定評価上は土地と建物一体としての価格を土地と建物に振り分けることとしており、「部分鑑定評価」を行って価格を求めることとなります。
建付地は、建物等と結合して有機的にその効用を発揮しているため、建物等と密接な関係を持つものであり、したがって、建付地の鑑定評価は、建物等と一体として継続使用することが合理的である場合において、その敷地(建物等に係る敷地利用権原のほか、地役権等の使用収益を制約する権利が付着している場合にはその状態を所与とする)について部分鑑定評価するものである。
不動産鑑定評価基準
建付地の評価手法
建付地の鑑定評価額を求め方は鑑定評価基準に以下の記載があります。
建付地の鑑定評価額は、更地の価格をもとに当該建付地の更地としての最有効使用との格差、更地化の難易の程度等敷地と建物等との関連性を考慮して求めた価格を標準とし、配分法に基づく比準価格及び土地残余法による収益価格を比較考量して決定するものとする。ただし、建物及びその敷地としての価格(以下「複合不動産」という。)をもとに敷地に帰属する額を配分して求めた価格を標準として決定することもできる。
不動産鑑定評価基準
前段の記述では、実務上は、建付地の更地としての価格を求め、そこに更地化の難しさや、最有効使用との乖離度合いを考慮した「建付増減価率」を乗じて求めます。
但し書き以下の後段の記述では、建物及びその敷地としての価格をもとに、控除法や割合法を用いて土地と建物に価格を配分し、建付地価格を求めます。
建付増減価率とは
それでは前段の方法で使用される建付増減価率とはどのようなものでしょうか。
これは、建付地と更地の価格差を反映し、更地価格から建付地価格を求める際に用いる補正率と考えられます。
建付地と更地の間で価格の差が生まれるのは、更地は建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制限する一切の権利が付着していない土地で、どのようにでも使えて最有効使用が実現できている土地であるのに対し、建付地は現在土地の上に建っている建物等により、土地の最有効使用が阻害されることから、一般的には、その土地活用の効率性が劣る分の価値が目減り(建付減価)していると考えられるためです。
よって、建付地でも、現状土地の上に建っている建物が最有効使用を実現するものであれば、建付増減価は発生せず、また既存不適格建築物が建っている等、現在考えられる最有効使用以上の活用がなされていれば建付増価が発生することがあります。
建付増減価率査定の難しさ
建付増減価率は、当該建付地の更地としての最有効使用との格差、更地化の難易の程度等敷地と建物等との関連性を考慮して求めることになります。
例えば、ほとんど最有効使用として活用されていたり、建物の規模が敷地に比べて小さく、取り壊しやすいものなどは、相対的に建付増減価率(ここでは特に建付減価率を指すこととします。)は小さなものとなります。
具体的な算定に当たっては、現在の建物が存することによる収益性の低下のうち、土地に配分される部分を査定して求めます。例えば対象地における最有効使用が10階建ての賃貸マンションで、現状が6階建ての賃貸マンションであれば、その差の4階分の収益性の低下分を収益還元法の手法により検討することで求めることが多いと思います。(土地残余法による評価額の差から求める等)
また、建付減価率の上限値は、建物取り壊し費用の金額となります。なぜなら、これ以上の減価をするのであれば、実質的には更地化をすることが経済的に合理性があるからです。(よって、取り壊し最有効使用の自用の建物及びその敷地の価格相当額が、建付地の価格の下限となります。)
建付減価率の上限値は上記より明確ですが、では上限値と更地価格の乖離のうち、どれだけを建付減価率として採用するかは難しいところです。
複合不動産価格から求める方法
一方で後段の複合不動産価格から敷地に帰属する額を配分して求めた価格は、明確に対象不動産の建付地価格を求めることができます。
建付増減価率のような査定された補正率を乗じるのではなく、一体としての複合不動産として算定した価格のうち敷地に帰属する額が、原価法の土地建物割合などの明確な指標が存在することにより、説得力のある根拠を示したうえで算定できるからです。(適切に原価法が適用できていればですが・・・)
また、上記の通り、この方法は土地建物が一体として構成されている場合に、その状態を所与として構成部分を評価する部分鑑定評価の本質にも合った方法であり、理論的であるとも考えられます。
さらに、実務上は税務・会計の場面で内訳価格を求めることを要求される場面も多いと考えますが、その際にも、土地価格・建物価格・一体としての複合不動産価格の関係を説得力をもって説明することができます。
このような実務的なメリットや理論的な整合性を考えると、鑑定評価基準の但し書きの方法による建付地評価が、今後さらに普及していくことが望ましいと考えます。
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