【寄稿】気象予報士試験第56回実技試験(令和3年度第1回)実技2 解説

本稿は筆者Bearringの寄稿になります。

留意事項等は下記リンクページをご参照ください。

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問1

(1)

等圧線の記入問題が第55回に引き続きの出題となります。

等圧線記入の問題ではまず、エリア内の閉じた等圧線と、それを囲う等圧線の気圧値を把握することです。

今回は

A.黄海の高気圧が、1012hPa

B.東シナ海の台風の一番外側は1008hPa

C.Aのすぐ西の等圧線は1016の高気圧と1012の高気圧に挟まれているため迷うところですが、「点F」が1010.6hPaですから、ここは1012hPaと判断できます。

D.Bの台風のすぐ西の等圧線はCとつながっているように見えますが、Lスタンプがありますので注意が必要です。今回は「点D」が1010.8、「点E」が1009.2と気圧は下がっていますので、この等圧線は1008であると判断しました。

E.Aの高気圧の北東側は1004の低気圧と1012の高気圧の間ですので1008

F.最後の南東側の等圧線は、BとEの高気圧側ですので、1012です。

こう見ると、1008と1012の等圧線の間を通すためには、等圧線が1本では足りないことがわかります。

解答欄外に出ていく1008、1012の等圧線が2本づつあるためです。

これらから1010の等圧線を書くためには、1012と1008の間を通せばいいわけですから、各点の気圧に留意すると解答例の通りとなります。

「点F」の間は、その南北に明確な1008と1012の等圧線があり、1000の等圧線はここを通さないといけないため、通れません。

それ以外の留意点としては、周辺の等圧線の形にできる限り沿った形状を意識することとなります。

(2)

こちらがいつもの穴埋め問題です。

基本的には読み取り問題となりますので、解答例と照らし合わせて用語が書いている位置との対応を覚えましょう。

なお、④のFAIRはほぼ正確、正確はGOODとなります。

(3)

雲分布の特徴として、中心の北西側では雲は少なく、あっても発達した対流雲はありません。

南東側は発達した背の高い対流雲があります。

この問題の特徴としては、上層雲にも言及することであり、上記は対流雲についてしか述べていませんから、これだけだと足りません。

台風で上層雲といえば、圏界面付近で時計回りに噴き出す巻雲の存在です。

解答例では、上部から噴き出した上層雲が南に広がるとありますが、上記を理解した回答が必要となります。

風速分布の特徴を風速に言及して書きます。

風速値は迷うところですが、風速のレンジを〇~〇ノットと指定して書く方法や、最大〇ノットと指定する方法があります。

ここでは可航半円と危険半円の特徴をキーワードとして入れ込む必要がありますので、南東側(進行方向右側)が強いことを示す必要があります。

(4)

等風速線の形に留意すると、60ノットの等風速線に囲まれた領域が強風軸ということがわかります。

これは9480m等高度線に近いですから、これを回答します。

位置関係は定番の回答方法となっており、トレーシングペーパーに写し取り、確認すると理解できると思います。

トラフは等高度線の曲率が最も大きいところ、風速が北西から南西に変わっているところを目指して引きます。今回は経度線に平行にとありますので、それを守ると、5700m等高度線の凹みのあたりから南にひきますので128度くらいとなります。

また、等高度線等温線に着目した発達可能性ですが、寒気(サーマルトラフ、気温の谷)が気圧の谷(トラフ)に先行していますので、トラフの西側には南下させる寒気がありません。

発達する温帯低気圧と結びついているトラフの西側では下降流があり、南向きに寒気を輸送することで、有効位置エネルギーを運動エネルギーに変換し、それが低気圧を発達させています。

よって、上記要素のないこの低気圧が今後発達する可能性は低く、この後の時間の数値予報資料を見ても、中心気圧が今後深まることは無い様ですので、可能性は低いと答えることになります。

オーソドックスな850hPaの前線解析です。

今回は等温線集中帯の南端に沿って風のシアもありますので、原則通りの対応で大丈夫です。

温暖前線の終了部分は、それまであった風向、風速のシアがなくなる辺りで止めるのがポイントです。

閉塞前線があるか無いかも前線を書くときのポイントですが、今回は低気圧中心の真上を強風軸が通っていると答えていますので、閉塞前線はありません。

問2

(1)

24時間後は5700mの等高度線の曲率が大きいところから、5760mの等高度線の曲率が大きいところ、+120の正渦度極大域を通るようにトラフを解析すると、120度付近となります。

緯度線が曲がっていてわかりにくいですが、+105の方にトラフをひくと、5760m線の曲率が120度付近と比べて緩やかで、トラフの立ち方自体も初期時刻とほぼ同じで、等高度線がこれだけ湾曲しているのにやや不自然です。

48時間後は133度付近に正渦度極大値が+136がありますので、これを狙って曲率の大きいところを通すと解答例通りとなります。

(2)

穴埋めであり、計算が主となります。

24時間後は070000UTC、48時間後は080000UTCということに留意し、距離を測って計算しましょう。

eは予報円の「半径」

gは暴風警戒域の「半径」を回答します。

hはややひっかけで、そのまま予報円と暴風警戒域の間の距離を測っても解答例のようになりません。

これはe-gで計算することになります。

iは「変わる見込み」とあり、台風が何かに変わるというのは熱帯低気圧か温帯低気圧となります。

後の資料では、関東の南海上で熱帯低気圧になっているのですが、この図上では、EXTRA TROPICALとあります。

意味としては、熱帯から外れるというような形になりますので、温帯低気圧が正解です。

これはトレーシングペーパーに写し取るだけで問題ないと思います。

48時間の方は、地上台風の位置の近くに+136があるので紛らわしいのですが、24時間予想図の正渦度極大値の位置が南南東であったこと、その際の正渦度極大値があったその周辺の正渦度域の24時間後、36時間後、48時間後の形状の変化を追っていくと、小笠原諸島から南西に伸びる正渦度域の中にある極大値が対応する極大値であると気づけると思います。

よってその中の+135の極大値の位置を答えることになり、北緯33度、東経140度が正解です。

予想図では温帯低気圧化が進む予想となっていることに留意しましょう。

850hPaでは、等相当温位線の集中帯の南縁に、低気圧性循環があり、その辺りで相当温位傾度が高く、前線ができています。

また、低気圧中心の西には500hPaのトラフがあり、気圧の谷は上空に向けて西に傾いています。

これは温帯低気圧の特徴であり、台風の構造が崩れ、温帯低気圧化する予想となっていることがわかります。

進路は台風予想図の方が、数値予報よりも南側を進む予想をしています。

中心気圧は、数値予報では一定のまま推移していることが読み取れますが、台風予想図右下の表内では48時間後までは深まる予想となっており、発達を予想しています。

(3)

熱帯擾乱は図11の実況では、日本の南にありますが、これは図1の台風が南に進み、弱まって格下げになったものです。

北陸付近の低気圧は、問1(4)③で回答した前線の寒冷前線上にあったキンクが低気圧として発達したものです。

問3

(1)

もはや定番となりつつある時系列図の読み取りです。

解答例と照らし合わせて理解可能と思います。

(2)

イは気温の下降が8時40分に始まり、海面気圧は8時10分に最低になっています。

この付近の時間帯で風向変化が大きいのは、8時50分ですので、問題文の指示通り風向変化を重視してこちらが回答になります。

ウは気温の低下が9時40分、海面気圧は9時10分に最低になり、降水も9時40分の開始です。

重視すべき風向の変化は9時20分から9時30分が大きく、10時10分も同様の大きさです。

上記を勘案すると9時10分から40分の間で、最も風向変化が大きいところが答えとなりますので、9時20-30分が正解となります。

(3)

(1)と(2)の解答から、ア⇒R、イ⇒P、ウ⇒Qとなります。⑤が正解です。

時刻は、Pでは降水がすでに長く続き、Qは降りはじめ、Rはまだないという関係にありますので、イで降水がある時間帯(8時半以降、9時20分まで)かつ、ウで降り始める直前の時間帯(9時20分頃)かつ、アではまだ降っていない時間帯(10時20分前)です。

よってこれを満たすのは9時30分の©が最も近いこととなります。

(4)

シア―ラインはおおよそ南東側の南東風~南西風と北西側の西風の間に書きます。

シア―ラインは帯状エコーの東縁にあることは、過去問でも出題があります(帯状エコーはシア―ラインの西側に沿っているという解答があった)ので、ここも同様の表現を問題文に沿った形で行います。

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