前回の続きになります。
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さらにここから、賃料を評価するため、
・積算法
・賃貸事例比較法
・賃貸事業分析法
の3手法を適用して賃料を決定することになります。
積算法では、
上記で求めた土地価格に、期待利回りを乗じ、さらに必要諸経費を加算して求めます。
・土地価格の一致
・期待利回りの一致
・必要経費の一致
が必要となりますが、この一致の難しさは前回で述べた通りです。
賃貸事例比較法では、
前回の取引事例比較法と同じ論点が、賃貸事例の比較においても発生することになります。
賃貸事業分析法では、
前回の収益還元法の論点のほか、建物に帰属する純収益の配分割合の一致も求められることになります。
そしてこれらの3手法により求められた賃料を調整して最終的な鑑定評価額である賃料が決定されます。
いかがでしょうか。
鑑定評価額が3社で一致するということはかなりのレアケースです。
そもそも、査定方法が厳しく規定されている地価公示の評価においても、A鑑定とB鑑定の評価額が一致するとは限らないのです。
何もかもがフリーな設定かつ、大規模用地で様々な利用方法や建物の建築方法が考えられる土地では、想定要素が多すぎて、全員の評価額が一致するというのは相当に珍しいものだと思います。
風呂桶に水を張って、時計の部品をいれてかき混ぜていたら時計が組みあがった。そんな表現がしっくりきます。
もちろん、今回の鑑定評価額が間違いであるとは言いません。
そもそも、私がそれが判断できるような材料も今はないですし、今回は限られた記事の情報をもとに、もしすべての試算価格等が一致するのであればこれだけのハードルを乗り越えなければならないということを単純に示しただけです。
現実には、試算価格がバラバラでもそれらの試算価格を調整する際にはある程度の裁量がありますので、最終結果が整合することももちろんあります。
最終結果の1㎡あたり428円というのも、統計資料等からはそんなに不自然な水準ではないのかもしれません。
ただ、昨今はエスコンリートをはじめ、鑑定業界の不祥事が目につきます。
真実はどうあれ、我々は社会のインフラです。
信頼がなくなれば必要とされなくなってしまう職業です。
目先の利益などにごまかされず、社会正義を貫ける人でなければ不動産鑑定士という職業についてはいけません。
不動産鑑定士は、自由な起業家や職業人である前に、まず社会から役割を付託された公的機関と同じであると思います。
それだけの責任があります。
裁判官が私利私欲のために、あるいは被告人からお願いされたからと自分の都合で判決を出すことが許されるでしょうか。
鑑定士も同じ責任を担っているのです。
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