早見表として、典型的な類型における重視される試算価格とその理由を記載します。
更地(住宅地、標準的大きさ)
取引事例比較法
規範性の高い類似事例が容易に収集でき、実際に市場で成立した実績のある価格であるため
更地(住宅地、標準的画地と比較して規模が大きい)
開発法
単価と総額の関係(規模の格差)を織り込んだ価格として算定する必要があり、当該価格は開発法による潰れ地や開発期間を考慮して決められるため
更地(高度商業地、駅前商業地等部分貸しが想定される地域)
収益還元法
開発ののち賃貸収益を獲得するために運用されることが想定されるため、当該不動産の最有効使用を想定した収益価格に基づいて価格が決定されるため
更地(路線商業地、自用または一棟貸しが想定される地域)
収益還元法
開発ののち賃貸収益を獲得するために運用されることが想定されるため、当該不動産の最有効使用を想定した収益価格に基づいて価格が決定されるため
路面店の営業が最有効使用の場合には標準的な事業収支に基づく収益還元法による収益価格も参考とする
更地(住商混合、標準的画地と比較して規模が大きい)
開発法
単価と総額の関係(規模の格差)を織り込んだ価格として算定する必要があり、当該価格は開発法による潰れ地や開発期間を考慮して決められるため
店舗としてのしようが最有効使用の場合には開発ののち賃貸収益を獲得するために運用されることが想定されるため、当該不動産の最有効使用を想定した収益価格も参酌する
更地(工業地)
取引事例比較法
実際に市場で成立した実績のある価格であるため
また、工場や倉庫の賃貸事例が少なく収益還元法の適用が困難なことが多いこと、事業収支のうち対象となる工場に帰属する収益を分離して把握することが困難なことが多いことから、本来は収益価格を参酌すべきであるが、現実は困難であるため
自用の建物及びその敷地(賃貸市場が未成熟)
原価法
賃貸が想定できない場合には、典型的需要者は自ら利用する事業者が中心となり、費用性を重視して判断を行うと想定されるため
自用の建物及びその敷地(賃貸市場が成熟)
収益還元法
賃貸の想定ができる場合には、対象不動産の典型的需要者は賃貸により当該不動産を使用することと、購入により対象不動産を使用することを比較して意思決定を行うことになると考えられるため
標準的な純収益をもとに算定した収益価格を考慮し、対象不動産が生み出す効用を参酌する必要がある
自用の建物及びその敷地(企業収益を生み出している不動産)、事業用不動産
収益還元法
事業の用に供されている不動産はその事業収益をもとに投資の意思決定が行われるため、収益還元法による収益価格により価格を決定する
特に、ホテルや老人ホームなどのように、他に転用することが困難な資産においては原価法による価格を採用してはならない
また、キャッシュフローが継続してマイナスの事業用不動産は、標準的な事業者の運営によってもそれを改善することができない場合、収益価格が0と算定される可能性がある
誰が運営してもキャッシュフローがマイナスになる不動産に対して投資を行う事業者は通常想定されないためである
貸家及びその敷地
収益還元法
賃借人が現実に存在することから、当該契約に縛られた評価を行わなければならないため
取り壊し最有効使用の判断は、立退料の算定が困難であるため、立ち退きが合意済みなどの場合を除いて原則行うことは困難である
底地
収益還元法
底地は契約により得られる地代収入のみが基本的には収益の源泉であるため
旧借地法による普通借地権の場合、契約期間が永続する可能性が高いため、永久還元法による価格となる可能性がある
定期借地により、借地期間満了後の返還が確実である場合には、有機還元法により収益価格を算定する
その場合には復帰価格を考慮した評価となる
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