更地の評価ではどんな手法が使われていればいいの?土地の特性と適用手法

不動産鑑定

更地とは建物等の定着物がなくかつ使用収益を制約する権利等の付着していない土地を言います。(土地上に建物が建っているときの土地部分の評価は更地評価とはなりません。実務上結構見かける間違いなので注意してください)

一言に更地の評価といっても、更地の存する場所や当該土地の大きさによって、その評価方法は複数パターンがあります。

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住宅地域にある更地

住宅地域内にある更地(周りは戸建住宅が立ち並ぶような地域)においては、主に取引事例比較法による比準価格が重視されて価格が決定します。

住宅用地などでは、その不動産の典型的な需要者はマイホームを購入するエンドユーザーが見込まれており、彼らは、周辺の土地相場を主に考慮して不動産購入の意思決定をするためです。

商業地域にある更地

商業地域内にある更地では上記の取引事例比較法による比準価格のほか、収益還元法による収益価格を重視して価格を決定します。

これは典型的需要者が、当該土地を取得する目的が、その土地を使うことにより生み出される収益を獲得することだからです。

収益還元法による評価については、当該土地上に最有効使用の建物を建築し、そこから得られる純収益をもとに行います。

要はその土地を使って最も稼げる不動産事業を行うことを想定し、その事業による収益が土地の価値の根源になります。

ここでたまに見かける失敗例としては、土地の最有効使用と異なる想定建物の建築を想定した収益還元法を行っているものが挙げられます。

1事例として、土地の最有効使用はショッピングセンターと判定しつつも、マンションを建築する前提で収益還元法を行っている事例を見たことがあります。そのような査定をしてしまうと、最有効の用途ではない使い方に制限された価格を求めることになりますので、更地価格とはなりません。注意しましょう。

工業地域内の土地

工業地域内の土地は、典型的な需要者は自己の事業の用に供するために取得する事業会社が想定され、彼らは周辺の土地相場を考慮して取引の意思決定を行うため、おもに取引事例比較法による比準価格を重視して価格を決定します。ただし、規模が非常に大きいものが多く見受けられますので、個別的要因の比較において、規模大の補正がどうなっているかを確認する必要があります。

また、収益性の高い倉庫が建築可能な土地については、収益還元法による収益価格も考慮されるべきと考えます。

その地域の標準的な土地利用の大きさと比べで規模の大きい更地

地域の標準的な土地の大きさと比較して、大きい規模の土地については、上記のほか、開発法を適用して価格の検証を行う必要があります。当該手法は土地を開発するデベロッパーの視点を取り入れた手法となっています。

ただし、想定パラメータに不確実な部分が多いので、他の手法も併用して慎重に適用する必要があります。

まとめ

いずれの価格算定方法も、その不動産の典型的な需要者がどのような意思決定メカニズムを持っているかが、手法の決定に大きくかかわります。収益性を重視して投資する物件に対し、収益還元法が適用されていなければ、その評価手法は疑うべきです。

【参考 不動産鑑定評価基準(国土交通省)】

第1章 価格に関する鑑定評価 第1節 土地 Ⅰ 宅地 1.更地
更地の鑑定評価額は、更地並びに配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。当該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等においては、さらに次に掲げる価格を比較考量して決定するものとする(この手法を開発法という。)。
(1)一体利用をすることが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地に最有効使用の建物が建築されることを想定し、販売総額から通常の建物建築費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格

(2)分割利用をすることが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地を区画割りして、標準的な宅地とすることを想定し、販売総額から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格
なお、配分法及び土地残余法を適用する場合における取引事例及び収益事例は、敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきである。


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