不動産鑑定士は独立開業しやすく、地方部で暮らしたい方にも他の士業と比べて仕事があるといわれています。
私も不動産鑑定士この評判自体はあながち嘘ではないのかなと感じています。
一方で先日、若手の鑑定士からこんな声を聴きました。
「自分の地元で開業したいと思っていたが、地方で公的仕事の取り合いになるため先輩鑑定士から歓迎されていない。」
「業界にいまだ古い風習が残っており、地元の有力者や重鎮の先輩に礼を尽くした挨拶をしなければいけない暗黙のルールがある。」
先輩方の言いたいこともわからなくはないですが、不動産鑑定士のような仕事は、長期的な目で見ると、どんどん若手を歓迎していかなければならないと思います。
むしろ、歓迎する方が先輩方へのメリットも大きいはずです。
ここでは、当HPを見ていただいているかは全く不明ですが、先輩方に若手をどんどん受け入れて歓迎した方が「お得」ということを布教したいと思います。
新しい仕事は、優秀な人が作る。
不動産鑑定業は不動産鑑定士の独占業務であり、地価の適正なありどころを社会に示す公共性の高い仕事です。
一方、鑑定士の仕事はそれだけではありません。
近年は鑑定士協会のマスコットキャラクターも「こんさるくん」、「あぷれいざるちゃん」と名前がついており、コンサルティング業務も重視されています。
不動産の鑑定評価自体はAIや機械学習といったテクノロジーと相性がいいため、代替可能性が比較的高い業務です。
そのようなことを考えると、独占業務が今後新たに国から降ってくることは期待できないでしょう。
よってこれからの不動産鑑定士の仕事は、国が作るのではなく、民間から作られていくと思われます。
そしてその新しい仕事を作っていくのが、新しく業界に参入してくる若手です。
若手に対して魅力的な環境を提供しないことは、これらの新しい機会をみすみす逃すことになります。
業界の持続的発展
業界の発展のためにも若手の参入は大切です。
不動産鑑定士は税理士と同様、平均年齢が高いことも特徴となっています。
長く働けることは当資格の良いところではありますが、変わり続ける社会経済情勢の中で、同じ環境・同じ業務・同じ人間で仕事をしていては、業界は残ってはいけません。
常に新たな風を入れ続けなければ、住宅は朽廃してしまうように、変わらない業界は崩れて忘れ去られてしまいます。
我々は、若手を温かく迎え入れ、自己の持つ知識や経験を次世代に受け継ぐ努力をすることではないでしょうか。
能力が低くても、新しい仕事ができれば、適正な位置がある。
一方、最初の発言である、
「自分の地元で開業したいと思っていたが、地方で公的仕事の取り合いになるため先輩鑑定士から歓迎されていない。」
「業界にいまだ古い風習が残っており、地元の有力者や重鎮の先輩に礼を尽くした挨拶をしなければいけない暗黙のルールがある。」
という言葉が出てくる根底としては、仕事が奪われるかもしれないという危機感もあるかと思います。
しかし、私たちの仕事はなくなりません。
若手が新たな仕事を作ってくれれば、むしろ増えていく可能性の方が大きいのではないでしょうか。
新しい仕事に対応できないという先生方もいるかもしれません。
しかし、「すべての仕事で最高の人材・最高のレベルが必要とされるわけではありません。」
世の中の構造は「フラクタル」型になっています。
どのような人材でも、その能力がぴたりと当てはまる環境があります。
課題解決に常に最新・最高のテクノロジーは必要ありません。
盲腸の手術で、世界最高の外科医の能力は必要でしょうか。
あるに越したことはないでしょうが、オーバースペックです。
それよりも、近くにいてくれて、すぐに対応してくれる、親切な先生が必要ではないですか?
そして盲腸の手術ができる普通のお医者さんの方がたくさん必要です。
各地に必要です。
外科という治療を始めたのは一人の天才かもしれませんが、結果として普通のお医者さんにたくさんの仕事が生まれました。
鑑定業界で若手を歓迎するということは、その一人の天才を生み出す機会を得ることです。
外科という仕事を手に入れた町医者のように新たな仕事を得られるチャンスかもしれません。
重鎮の先生方、このようなメリットも踏まえてぜひ開かれた鑑定士社会にしましょう。
そしてこれから受験を志す方、開業を志す方。
安心して業界に入ってきてください。歓迎します。
一緒に良い仕事・未来を作りましょう。
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