【寄稿】気象予報士試験第58回実技試験(令和4年度第1回)実技2 解説

本稿は筆者Bearringの寄稿になります。

留意事項等は下記リンクページをご参照ください。

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問1

(1)

毎年恒例の穴埋め問題です。

⑦は500hPaの低気圧中心の(⑦)側ではなく、地上低気圧中心の(⑦)側を答えさせるようですので、回答は「南東」になります。

低気圧が今後発達する可能性が高いに関連するのは「バルジ」です。

これは暖気移流が強いことを示しています。

その他の選択肢は、この低気圧の発達には関係しません。

コンマ状雲はポーラーローの時に、

にんじん状雲は線状降水帯(バックビルディング型の組織的積乱雲)の時によく出てきます。

(2)

松江では低層雲がありません。

このような時には下層雲量の記号は中層雲量を表すことになります。

よって8部雲量で2の割合で中層雲(今回は高積雲)がある。になります。

(3)

トレーシングペーパーを使うと、雲域Aは、図4では乾燥域、図5では下降流域にあります。

700hPaの高度で乾燥して下降流のため、ここより上では雲ができる状態ではなく、またこの高度にも雲は届いていないため、雲頂高度は「低い」となります。

同じく雲域Bもトレーシングペーパーを使うと、図4では南東半分では湿潤、北西半分では乾燥しています。

図5ではほぼ全体が上昇流域となっています。

解答例では単純に「湿潤で」とありますが、解答欄を余していますし、「状況」を書けとあるため、上記の実態をそのまま書いても問題ないと思われます。

雲頂高度は700hPaで湿潤かつ上昇流域のため、この高度を含めこれより上空で雲ができているため、「高い」が入ります。

(4)

観測点のデータを用いてとありますので、雲に対応する領域の湿数を調べます。

すると雲のある領域は周囲よりも湿数が小さく、3度以下の湿潤域の地点が多くあることがわかります。

また、小さな角度ではありますが、等温線を温かい方から冷たい方に風が横切るように吹いていますので、暖気移流の場となることがわかります。

問2

(1)

こちらはトレーシングペーパーに写し取り、距離を計測、それを12時間で割ることで正答できます。

留意点としては、12時間までの移動は北緯40度線をまたいでいますので、10度の長さを600カイリとして計算するのではなく、20度の長さを計り、それを1200カイリとして比例式を組み立てることが必要となります。

こちらは比較的わかりやすい表の穴埋めです。気圧の変化量は地上天気図を追っていけば正答できます。

渦度最大値の方位は、12時間、24時間予想図でトラフを書いてみると、12時間時点では比較的わかりやすい気圧の谷(等高度線の南側への凹み)があり、その周辺には渦度+271がありますのでこれを、

24時間後では

上空の慣例低気圧から東に延びるトラフの近くに+334がありますのでこれを

それぞれ選択し、トレーシングペーパーに写し取った地上低気圧との位置関係を読み取ります。

強風軸は、渦度解析図しか与えられていない場合は渦度0線の南縁に沿って、等高度線の形を参考にひきます。

すると、24時間後は強風軸の寒気側に地上低気圧中心があることがわかりますので、「高緯度側」になります。

(2)

今回はトレーシングペーパーへの写し取りや比例計算が多いですが、ここも写し取りで正答できます。

12時間後の低気圧の位置は明らかに図8上では乾燥域に、図8下では下降流域にありますので、そのまま簡潔に回答すると解答例のようになります。

ここで、中心付近に乾燥域があり、下降流となっているのは次の問題への布石となっています。

(3)

前線解析です。こちらは図6、図8、図1、図5を使いとありますので、余すことなく利用します。

まず、図1と図5を使い、当初の前線は当初の850hPaの等温線のどの温度に対応していたのかを調べます。

おおむね6度線、寒冷前線は6-12度線くらいに対応していることを確かめたら、図6と8を使い、6度線の形をトレーシングペーパーに写し取りましょう。

この形を参考に、図6の地上の風のシアと、等圧線の凹みを参考に前線を書きます。

注意すべきは、(1)で24時間後は強風軸の高緯度側に低気圧中心が入っているということで、閉塞前線があるということです。

12時間時点では、「ほぼ真下」となっていましたが、閉塞の可能性はあります。

(2)の要素も考えると、閉塞していない低気圧では中心付近は上昇流ですが、閉塞している低気圧では中心付近が下降流となり、上昇流の極大は閉塞点となります。

今回は閉塞前線を書くのが(2)からも正しいでしょう。

ここでは、強風軸の位置と低気圧中心の位置関係、低気圧循環の中心位置を見ると、少しだけ閉塞前線が書けそうです。

閉塞前線は強風軸と前線が交わるところ、地上低気圧循環の中心を目安に作ります。

問3

(1)

①②

見慣れない図ですが、表に書かれている要素のうち、何か2つがわかればその要素を探して線をたどっていくことで解答を得ることができます。

これの解き方を覚えてももう二度と出題されることはないともいますが、見慣れない図が出たときでも、グラフ関係は「要素が2つわかればほしい情報が得られる」という大原則を忘れずにいれば立ち向かえます。

(2)

上記の通りです。

アは図10では3m以上、イは2.5mくらいですので、差が大きいのはアです。

理由としては、地点イは図6を見ると18日9時時点までは東の高気圧の縁辺流と西の冬型気圧配置の北寄りの風との間に挟まれており、風向も定まらないような状態であったものの、地点アはそもそも初期時刻のすぐあとくらいから冬型気圧配置による北寄りの風を長時間にわたり受けてきているはずで、①の最後の一文である「それ以前には風は吹いていないものとする」という試算の条件とは状況が異なることが想定されます。

よって、解答例の通り書くのは難しいかと思いますが、要はアは12時間以上同じ方向からの風を受けていたので、12時間しか風が吹いていないという前提での試算結果よりも当然波は高くなる。ということを示せれば大丈夫です。

(3)

こちらは距離を定規で図り、その結果を表に当てはめれば容易に導くことができます。

線がごちゃごちゃしていきますので、試験会場には消せる色ペンを持っていくことも重要かもしれません。

問4

(1)

時刻はそれぞれ、風向の急変・気温の低下・気圧の上昇が起こった後の最初の時刻を答えればよく、平戸、下関はそれがはっきりしているため、解答例記載の時刻のあたりを見てみると納得できると思います。

平戸に関する理由は解答例の通りです。

寒冷前線が通過すると、風向は南西方向から北西方向に代わることが多く、冷たい空気は重いため、その分海面気圧は上昇し、冷たい空気が地表に入る影響で気温は急降下します。

(2)

風向は図から読み取るだけですね。

浜田上空の空気塊の移動と地形との関係は

、12時は図12の地形図にある山岳と平行に吹いており、15時は垂直近い角度で吹いています。

12時は平行ということでb、15時は山を越えているのでaになります。

なお、cの山地を超えてくるというのは、山から海の方向に吹くことを示しており、9時がそのような状態です。

等温線に沿うように、南西風と西寄りの風の間を通るように寒冷前線をひきます。

寒冷前線の東西で気温が大きく変わるため、等温線に沿って引くことが大切です。

(2)

12時は山地に沿って風が吹いていることをしめし、温度移流の大きさは、下関が等温線を大きな角度で横切るように風が吹いているのに対し、浜田では等温線と平行に風が吹いているため、寒気移流が弱いことを示します。

15時は、まず山地に対して大きな角度をもって風が吹いていることをしめします。

温度移流は、風向はほとんど同じですが、下関のほうが等温線の間隔が広いため、浜田の方が温度傾度が大きく、その分寒気の移流が強いことを示せばよいです。

(3)

こちらは35度線上で最も明るい色の点が東にどれくらいの動いたかを見て計算することになります。

の間の距離を測り、その長さを緯度の長さと照らし合わせると約1.4度分、緯度0.1度は11.1kmのため、移動距離は約155km。それを6時間で割ると、25.9km/hですから、回答は30km/hです。

(4)

風向の変化をみてみると、11時と15時に変化があります。またこの時刻は気温の急落も観測されますので、ここが寒冷前線の通過候補となります。

平戸等との違いは、上記の風向と気温の動きはありましたから、海面気圧が急上昇していないということになります。

それが起こる原因としては、気圧とは空気の重さですから、空気密度に変化を及ぼすようなものが正解となります。

気温の違いが密度と関係しますから、aが回答となります。

平戸の寒冷前線通過時刻の前後では、風向が上空に向かって時計回りから反時計回りに代わっています。

これは寒冷前線通過時の定番問題なため、知識として覚えましょう。

a.図14を見ると明らかに15時です。

b.図12で書いた前線は12時には浜田のすぐ東にありますので、950hPaの前線は12時前に前線が通過したことになります。地上の寒冷前線はそれよりも前に通過していますので、11時が正解です。

c.図13を見て、レーダーエコーが強いところが寒冷前線による降水とすると、前線の西側で降水が強くなりますから、寒冷前線は12時ころには浜田を通過したのではないかと、考えられます。15時には完全に東に抜けています。

よって11時が正解です。

気象要素の変化として、風向と温度の低下を挙げていました。

温度の低下はbが該当することがわかりやすいと思います。

aは前線面が上昇するとどうなるのかを考えると、今回は寒冷前線ですので、前線面が高くなると、その分寒気の層が厚くなります。

寒気の層が厚くなるとその分気温が下がります。

よって気温が下がるという現象にaも影響していると思われます。

よってab両方が正解となります。

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