自動運転技術の実用化において、もっとも難しいのは技術面ではなく法整備面であるといわれる。
技術自体は現時点で問題なく(少なくとも人間が運転するよりは)公道を走ることができる技術があるという。
一方で、事故を起こした時の責任はだれがとるのかという問題があり、この解決ができない以上、完全な自動運転の実用化は難しい。
現在、この問題を解決するために、ジュネーブ交通条約に加盟している団体では
- 自動運転をしている車の運転を、運転手がオーバーライド(AIと反する行動を入力すると、運転者の挙動が優先される)できる。
- 最終的な監督は運転者がしている以上、運転者に事故の責任がある。
という建付での法整備が進む。
この事例から考えてみると、あらゆる士業に上記の考え方は当てはまるのではないかと思う。
そもそも運転免許を含めた資格とは、無資格者の実施が法律により制限されている「独占資格の業務」を行ってもいいという許可をいう。
運転であれば、自動車の運転という、法律により制限を受けていた権利を行使するための許可が運転免許であり、不動産の鑑定評価であれば、法律により無資格者が行ってはならないとされる不動産の経済価値を判断し、価格として表示するという権利を行使するための許可が不動産鑑定士である。
不動産の鑑定評価にかかわらず、公認会計士の監査、弁護士の法律相談など、そのうちすべての士業業務は、高度に発展したルールベースのエキスパートシステムや、機械学習をはじめとするAIの技術により、実現が可能となるだろう。
法律などのルールにより決められた手続きを踏むタイプの仕事は、明確なルールがあるため、どちらかというとコンピュータが行いやすいタイプの業務だからである。
このような点から、なくなる仕事ランキングなどでは監査技術者等、士業の業務が上位に入っていることは多い。
一方で、上記に挙げた自動運転技術の実用化の道筋を見るに、「機械の出した結果に判断を加え、最終的に責任をとる者」というのは、必ず必要になるだろう。
選好する自動運転でもこれだけの長期間にわたり議論が続き、かつ人間の関与余地が残る以上、士業の業務でも同じ方向を踏襲する可能性は十分にあると思う。
よって、世間で言われているほど、士業の業務がなくなる、会計士はオワコンという字流れはもう十数年は来ないのではないだろうか。
もちろん業務の内容は変わるだろうが、上記のうわさや根拠のない情報を信じて資格を取らない言い訳を作る必要はないと思います。
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