為替相場が連日荒れている。
ついに今週1ドルは144円を超えた。直近ではやや円高方向に戻しているが、円安材料が消えたわけではない。
この、1ドル144円という相場は、円安の相場を1998年以来24年ぶりに塗り替えたそうだ。
その前にこの相場を超えたのはいつだったのか。
調べてみるとどうやら1990年のことらしい。
1990年を振り返ってみると、バブル経済の真っただ中であり、日本では資産価格が高騰していた時期である。
もちろん、当時は現代ほど経済のグローバル化は進んでいなかったし、1985年のプラザ合意によるドル高是正からまだ5年しかたっていなかった時期であるため、同列の比較はできない。
しかし、この1ドル144円という相場は、それほどに異常であるという一つの水準を示しているものと私は認識している。
この円安はやはり日本と諸外国(特にアメリカ)との金融政策の違いによるところが大きいだろう。
先日のジャクソンホール会議のあと円安が加速したことを踏まえると、金利に関する予測が大きく変わったことが大きい。
同会議のまとめとして
「パウエル議長が物価重視の姿勢を明示し、9月に75bpの利上げを行う可能性にも改めて言及したこと」
が挙げられる。
同会議以前では、ある程度の利上げにより物価上昇を抑え込み、その後また金利の下落を想定している市場参加者が多かったが、この内容から、利上げペースの一段の引き上げと、金利下落時期の後ろ倒し懸念が市場に伝わったと考えらえる。
その結果、お金は金利の高い通貨に集まりやすい特性上、利上げをする通貨であるドルに資金が集まり、円安が進んでいるものとみられる。
前回も記載の通り、円安自体は決して悪いことではない。
私は円安であろうと円高であろうと、その状態が安定さえしていれば問題なはいと考えている。
しかし、急速な為替相場の変動は問題である。企業・家計は将来の予測を建てつつ消費・投資活動をしている以上、先を見通すことのできる安定した経済状況が何よりも大切だと考える。
国家が国を運営する際に、物価の安定(通貨価値の安定)は大変重視されるべき要素である。
通貨の価値が安定しているからこそ、その通貨は交換機能を持ち、尺度機能を持ち、価値保蔵機能を持つわけである。
いわば通貨価値の安定は、通貨の機能を支える土台である。
通貨の価値が大きく変動してしまえば、これらの機能を満足に満たすことはできなくなる。
この半年足らずの期間でドル円相場は大きく変動(下落)した。
日本円の価値は3割程度失われたことになる。
半年後に価値が3割落ちる通貨など誰も持ちたがらない。価値を維持できるものに変えておきたくなるだろう。
そういう意味では、インフレを起こしたいのであれば、通貨価値を下げるというのは良い選択肢なのかもしれない。
しかし、そもそも通貨とは信用の証でもある。信用がなければお札はただの紙切れだ。
為替相場が大きく動き、通貨の価値が不安定ということはそれだけ円への信用が揺らいでいるものととることもできる。
難しいかじ取りではあるが、物価・通貨価値の安定を図ることが大切だと思う。
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