評価対象とする土地に土壌汚染がある場合、土壌汚染のない場合の土地と比較して大きな減価が発生することがあります。
これは土壌汚染による最有効使用(対象不動産の効用が最も発揮される使用方法)の制限が最も大きな要因です。
不動産評価の際に、地歴調査などの初期調査により、土壌汚染の可能性があると判断されたものの、その内容及び範囲等が不明である場合には、他の専門家に汚染の調査を依頼し、そのうえで土壌汚染の範囲・内容・程度を明確にしたうえで対象不動産の最有効使用を判断する必要があります。
つまり土壌汚染のない場合の土地とある場合の土地、ある場合でもその位置や汚染の内容により、同一の土地区画でも最有効使用が異なる可能性があるということです。
そして、上記内容に基づいた最有効使用を決定したのち、最有効使用との関係から適切な土壌汚染の除去法を判断し、除去費用を見積もったうえで下記の算式により評価を行います。
評価額=汚染考慮外の価格―調査・除去費用―利用阻害による減価―心理的嫌悪感による減価
調査・除去費用
調査及び除去費用の見積もりは、土壌汚染対策法に基づく「指定調査機関」に依頼することになります。
なお、除去費用の見積もりのためにはフェーズ3調査※までの調査が必要となり、一千万円を超える費用と数か月の調査期間が必要になることがあります。
※フェーズ1調査:資料調査・土地履歴調査
フェーズ2調査:試料採取・表層調査
フェーズ3調査:ボーリング調査など深度調査を含む詳細調査
除去方法
除去費用については、法律による要請や最有効使用との関係から、浄化措置が必要な場合もあれば覆土などの措置で済む場合もあります。
したがって評価を行う際には
- 汚染物質の種類
- 内容
- 汚染範囲
- 行政指導の有無と内容
を把握したうえで、最有効使用を判断する必要があります。
これらの判断には不動産鑑定士などの不動産評価の専門家だけではなく、土壌汚染などの環境にかかる専門家の意見・判断も必要と思われます。
利用阻害による減価
除去方法によっては将来的な対象不動産の利用に阻害要因が生じることがあります。
例えば、覆土による汚染の封じ込めを選択した場合には、将来的に開発行為による土地の区画形質の変更が、困難になる可能性があります。
(汚染土壌の掘り返しによる健康被害の恐れがあります。)
また、浄化措置をとった際にも、措置後のモニタリングが必要になる場合があり、その差異に費用を要することがあります。
当該原価の査定方法としては、利用阻害のない場合とある場合での収益価格の差額を減価相当額とするなどの方法が考えられます。
心理的嫌悪感による減価
土壌汚染の除去措置が完了しても、心理的な嫌悪感による減価が生じる可能性があります。
特に土壌汚染地の最有効使用を住宅系とする場合にはこの影響が大きく発生するものを思われます。
本来であれば心理的嫌悪感のある土地とない土地の価格差を取引事例により分析するべきですが、日本では情報公開が進んでいないことや、それらの資料収集が困難なこともあり査定は困難であると思われます。
また、
- 汚染物質の内容
- 地域性(都会か地方か)
- 住居地域か商業地域か
- 汚染除去からの経過期間
などによっても大きく変わってきます。
実務上の扱い
実事務上は、
- 対象地上に建物が建っており調査そのものが行えない場合
- 調査費用が土地価格を超えてしまう場合
など調査が物理的にできない場合や経済的にできない場合が多くあります。
その際は正確な価値判断を行うことは困難です。
また、工業用地を工業用地として売却する場合等では、土壌汚染の除去があってもその価格を前提として取引がなされる場合もありますし、実際の売買では、当事者間の取り決めにより負担を決めるということも少なくありません。
不動産鑑定士が鑑定評価を行う場合は、調査範囲等条件として、土壌汚染の有無及びその状態については考慮外として価格を算定することが現在はスタンダードとなっています。
一方、鑑定評価書の利用者あるいは、自己で査定を行う必要がある方は、トラブルを避けるためにも、上記を考慮したうえで、土壌汚染地の価格は土壌汚染のない土地の価格とは異なるということ、鑑定評価にはこれらがどこまで反映されているのかを確認する必要があることを理解する必要があります。
不動産鑑定士に評価を頼んだ際にはフェーズ1調査(地歴調査)を行ってくれるのが通常と思われます。
当該調査において土壌汚染が判明した際は依頼者、鑑定士双方で対応を検討するとよいでしょう。
(工場敷地はそもそもフェーズ1調査では汚染の端緒が認められないとの判断はできないため、事前に取り扱いを決めておく必要があります。)
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