直接法の活用(再調達原価の算定)

不動産鑑定
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不動産鑑定評価における原価法の適用では、直接法と間接法を用いて建物再調達原価を求めることとされています。

一方、建築から年数がたっている古い施設の場合は特に、直接法による査定が困難という事で、直接法の適用がなされない事例があります。

(一部にはそのような理由もないのに適用していない事例も見かけますが・・・)

私は直接法こそ対象建物の個別性を反映した建物再調達原価を査定するための方法であると感じており、積極的に活用すべきと考えています。

どのようなメリットがあるかというと、

躯体・仕上・設備割合の把握が可能

直接法の適用にあたっては、工事請負書(ない場合には企業であれば固定資産台帳の取得原価)を用いることが多いと思いますが、これには工事区分別の内訳が記載されているため、どの部分にどれだけの金額がかかっているか、全体に占める割合はどのくらいかという割合が把握できます。

鑑定評価基準では減価は部位別に把握することとされており、躯体・仕上・設備では耐用年数が大きく異なるため、できるだけ正確な割合を調査することは鑑定評価の精緻化のために必須と思います。

対象建物の品等を考慮した単価水準がわかる

建物の鑑定評価必携にある事例や、建築着工統計などの統計の平均値を採用した間接法の適用では、建物それぞれの個別性を的確に反映することはできません。

対象建物の工事内容を分析することで初めて当該建物の占める経済的位置が把握でき、その品等が分析できるものと思います。

なお、間接法について否定的な見解を述べていますが、間接法による価格は、建築費水準のトレンドや、標準的な建物水準と比較して対象建物がどの程度の経済的位置を占めているのかという分析に用いることができるため有用性があるものと考えています。あくまで2手法を併用することで、より的確な評価に至ることができるため、安易に省略をしない方が望ましいという問題提起です。

非耐震建物の再調達原価を求めるのに、耐震建物の事例を用いた間接法の適用は論理矛盾

否耐震建物の再調達原価を間接法で算定している事例が良く見受けられますが、その場合には、非耐震建物の建物事例による間接法を適用すべきです。建物の鑑定評価必携やJBCIのデータを用いて新耐震基準の建物の再調達原価を算定しているのであれば、それは価格水準が異なるはずです。

その場合、建物の耐震化費用相当額の考慮や、耐震化に伴う賃貸可能床面積などにも差異が出るはずであり、このことを全く考慮しないのは論理的な矛盾があると思います。

JBCIデータや建物の鑑定評価必携のみに頼った査定は、対象建物のスペックを考慮していない

建築年度が違えば建物スペックが異なります。OA床ですとか、断熱構造、空調が中央か個別かといった機能等様々な違いが間接法では生じることとなります。その際、これらの要因を単価に反映することは困難であると思います。

以上、あくまで安易に直接法を採用しないという結論に至るのは、上記のような直接法により得られるメリットを簡単に放棄しすぎてはいないかという問題提起でした。

もちろん間接法には、現在の相場状況や、類似の建物を建てた場合というある種合理的な仮定を置いた試算ですので、間接法の水準も十分に加味する必要はあるとは考えております。一方、対象建物について深堀することは「不動産」という同じものが2つとない資産を評価する上では忘れてはいけない重要な視点だと思います。

省略して効率化を図ることも大事ですが、型通りの評価をするのではなく、対象不動産一件一件に寄り添った精緻な評価を心掛けたいものです。

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