不動産鑑定評価は科学か?(科学的態度と不動産鑑定評価)

不動産鑑定
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こんにちは、不動産鑑定士のKanvasです。

不動産鑑定評価は科学でしょうか。

私は鑑定評価、不動産の経済的価値を貨幣額をもって表すこの行為は科学であると思いたい立場をとっています。

確かに、不動産の価格の決定メカニズムは、市場で人と人とが交渉し、個別的な事情により決定するものです。

そのため、市場に成り代わって不動産の価格を決定することが求められる不動産鑑定士としては、単なる統計データからの推論だけから不動産の価格を決定するというのは、本質ではないかもしれません。

一方、不動産の価格のあるべき姿、当該不動産が占める社会的、経済的位置としての価格水準は、特に地域の価格水準としては、理論的価格・科学的態度で求められるべきものと考えます。

(個別の不動産に関する論点は今回はおいておき、地域の価格水準について述べたいと思います。個別の不動産取引価格は地域の価格水準にその不動産特有の特徴や各種の事情が反映されて、我々が観測する価格というものができあがるものと考えています。)

その中で、不動産鑑定評価が科学的であるとはどのようなことかについて考えたいと思います。

科学的であることとはなにかというとそこがまず難しいですが、哲学者であるカール・ポパーの提唱した思想に「反証主義」というものがあります。本論ではこちらに基づいて考えることとします。

なお、反証とは、「観察や実験を行って、間違っていることには証拠を突き付けること」です。

この世に存在する理論や事実と思われることについては、主張することは容易ですが、その理論が誤りであることを指摘するのは難しいものです。

例えば、「カラスは黒い」という単純な事実と思われるさえ、実は証明することはできません。100万羽のカラスがすべて黒かったとしても、1羽でも黒くないカラスがいればその前提は崩れるためです。そしてその黒くないカラスがいないことを証明することはできません(たまたま見つかっていないだけ、ないことの証明は難しく、悪魔の証明といわれます。)

ですので、なんでも主張すればよいということではなく、科学的な態度とは、人からの批判を受け入れることができる主張に限定すべきものと私はとらえます。

よって、科学的な態度に基づいた理論とは、実験や観察等による反証による検証が可能なものについて扱うべきで、反証できない理論は科学とは言えないものと考えます。

(例えば、「この世界は神が作ったものだ」という理論は、どんな反証を考えても、それは「神様がそうしたから」、といくらでも言い逃れができてしまいます。これは科学的な態度ではありません。このような実験等によって反証できない理論は「反証可能性を持たない理論」と呼ばれます)

ここで鑑定評価に話を戻します。不動産鑑定評価において例えば取引事例比較法の適用では、「対象不動産の属する地域の標準的画地」と「事例の属する地域の標準的画地」との間で環境条件・交通接近条件・街路条件などにより地域要因の補正が行われます。

その際、交通接近条件や街路条件については、「駅からの距離100mにつき1%の差をつけよう。」、「前面道路幅員1mの差につき1%の差をつけよう。」という形で、地域要因の比較が行われることが多いと思います。

これについては、本当に駅からの距離100mにつき1%の差が、正しいかどうかは不明ですが、豊富な事例を統計解析することなどにより、検証することが可能です。

つまり、実験によって反証することのできる評点のつけ方であり、科学的な態度であると考えます。

一方、環境要因では、「繁華性の違い30%」のような形でざっくりと比較・査定されていることが多いと感じます。

この30%の根拠について、鑑定士の経験からであるとか、周辺の相場を考慮して、というようなあいまいな回答では、「神様がそう言っているから」という回答と大差がなく、不動産評価の専門家としての説明責任を果たしていないと思います。

不動産の取引事例は個別の事情を含んだものが多く、それゆえ地域要因の比較、特に環境条件の比較は難しいでしょう。

本来であれば、対象不動産の存する近隣地域、事例の存する地域ごとに、類似の取引事例の回帰分析などを行い、その地域ごとの平均価格を算出したうえで、その地域の平均価格の比が地域要因の補正率となるものかと思います。

もちろん現在の取引事例数や情報公開のレベルではこのようなことは難しいのは承知です。

しかし、不動産の経済価値を評価する専門家として、常に科学的態度をもって評価を行うために、説明可能性のあるパラメータを使うことや、第三者による検証や反証を行うことのできる算出方法を心掛けることを常に意識したいと思います。

それができて初めて採用されたパラメータについては、議論ができる俎上に乗るのだと思います。


 

 

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