フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章⑮(個別分析③)

不動産鑑定

やわらかい言葉で不動産鑑定評価基準及び留意事項の6章がつまり何を言っているのかをざっくばらんに、実務的な観点を踏まえながら解説・コメントしています。

(引用符で引かれた項目はすべて国土交通省の不動産鑑定評価基準及び不動産鑑定評価基準運用上の留意事項からの引用となっています。)

第一回はこちら(補足説明等込み)

フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章①
鑑定評価理論を学ぶ上でイメージがつかみにくく、最後まで暗記・理解が難航するのは第6章ではないでしょうか。 この連載では、やわらかい言葉で不動産鑑定評価基準及び留意事項の6章がつまり何を言っているのかをざっくばらんに、実務的な観点を踏まえながら解説・コメントするものです。(全文解説します。)

前回はこちら

フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章⑭(個別分析②)
個別的要因の分析上の留意点について対象不動産と代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度を把握するに当たっては、次の点に留意すべきである。

2.最有効使用の判定上の留意点

不動産の最有効使用の判定に当たっては、次の事項に留意すべきである。

(1)良識と通常の使用能力を持つ人が採用するであろうと考えられる使用方法であること。

(2)使用収益が将来相当の期間にわたって持続し得る使用方法であること。

(3)効用を十分に発揮し得る時点が予測し得ない将来でないこと。

最有効使用の判定にあたっての留意事項ですが、1-3は理解しやすいでしょう。

特殊な能力を持った人しかできない方法ではなく、

少しの間しか持続できない方法でもなく、

いつかかなうというような方法でもないということです。

(4)個々の不動産の最有効使用は、一般に近隣地域の地域の特性の制約下にあるので、個別分析に当たっては、特に近隣地域に存する不動産の標準的使用との相互関係を明らかにし判定することが必要であるが、対象不動産の位置、規模、環境等によっては、標準的使用の用途と異なる用途の可能性が考えられるので、こうした場合には、それぞれの用途に対応した個別的要因の分析を行った上で最有効使用を判定すること。

基本的には不動産の最有効使用は近隣地域の標準的使用と同じ用途となることが多いです。

戸建住宅が建ち並んでいる地域において、高層事務所が最有効使用になるケースはまずないでしょう。

それは不動産は地域の構成要素であり、その利用形態は地域の制約を受けるためです。

地域との関係において不動産はその影響を受けるとともに、その不動産自身も所属する地域の在り方に影響を与えます。

そうして地域は作られていくわけです。

一方、対象不動産の個別的要因によっては、地域の制約が及びにくいものも考えられます。

例えば、商業ビルが建ち並んでいる地域の中にあっても、ホテル需要が見込まれ、それが最も収益性が高く、実現も可能であれば、ホテルが最有効使用になりえます。

戸建住宅が建ち並んでいる地域の中でも、大きなまとまった区画があり、容積率等の制限もクリアできれば、マンションが最有効使用となる可能性もあります。

ここでは、そのような可能性もあることを示しています。

なお、このような場合には、取引事例比較法の適用において、いわゆる標準画地を使用する間接比較法よりも、対象地と事例地を直接比較する直接比較法が本来は有用と考えます。

(地域の標準的な土地を想定し、そこに比準する意味が上記の内容を考えると趣旨とそぐわないため)

(5)価格形成要因は常に変動の過程にあることを踏まえ、特に価格形成に影響を与える地域要因の変動が客観的に予測される場合には、当該変動に伴い対象不動産の使用方法が変化する可能性があることを勘案して最有効使用を判定すること。

(2)最有効使用の判定上の留意点について①地域要因が変動する予測を前提とした最有効使用の判定に当たっての留意点地域要因の変動の予測に当たっては、予測の限界を踏まえ、鑑定評価を行う時点で一般的に収集可能かつ信頼できる情報に基づき、当該変動の時期及び具体的内容についての実現の蓋然性が高いことが認められなければならない。

基準部分(引用前半部分)では、価格形成要因は常に変動するものであるため、今の最有効使用が将来にわたっても最有効使用であるとは限らないため、動態的な分析をする必要があることを述べています。

といっても、その変動を反映したうえで最有効使用を判定するには、その変動可能性が高いことが必要です。あいまいな予測のもとに異なった価格形成要因を想定することは認められません。

20年後に新幹線が通るかもしれない。内容ではなく、3年度に開業すると決定している。というレベルでの蓋然性が必要となります。

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