一体減価って何?市場性に基づく収益価格との乖離を積算価格に反映する方法

不動産鑑定
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こんにちは、不動産鑑定士のKanvasです。

原価法の適用において考慮される一体増減価率についての私見です。

減価修正について鑑定評価基準では、

減価修正の目的は、減価の要因に基づき発生した減価額を対象不動産の再調達原価から控除して価格時点における対象不動産の適正な積算価格を求めることである。

減価修正を行うに当たっては、減価の要因に着目して対象不動産を部分的かつ総合的に分析検討し、減価額を求めなければならない。

不動産鑑定評価基準

とあり、その後減価の要因と減価修正の方法が述べられています。

ア  対象不動産が建物及びその敷地である場合において、土地及び建物の再調達原価についてそれぞれ減価修正を行った上で、さらにそれらを加算した額について減価修正を行う場合があるが、それらの減価修正の過程を通じて同一の減価の要因について重複して考慮することのないよう留意するべきである。

不動産鑑定評価基準

なお、実務指針に以下の記載があります。

ⅳ 減価修正の手順における一体減価の取扱い 建物及びその敷地の減価要因については、土地・建物各々の減価修正において考慮 する場合のほか、実務の実態を踏まえて、建物及びその敷地一体の減価として考慮される場合もあることを明確にした。(P114)

b 原価法における市場性の反映について 原価法においては、再調達原価や経済的残存耐用年数等に基づく減価修正(一体減価 を含む。)において、市場性を適切に反映する必要があるが、対象不動産の種類や特性 等により、積算価格と比準価格や収益価格等との間に大きな乖離が生ずる場合があるの で留意が必要である。例えば、建物が古いにもかかわらず収益性が非常に高い賃貸ビル や、逆に、投資額に対して極めて低い収益性に留まるゴルフ場や保養所等の評価に あっては、その点を十分認識した上で、試算価格の調整の段階においてその差異について検討を加え、鑑定評価額を決定しなければならない。 なお、手法間の整合性の観点から手法を適用する中で適切に調整でき、論理的にも 矛盾がないと判断される場合は、原価法において、比準価格や収益価格等との開差について市場性の観点から分析し、市場性増減価として修正することもできる。(P143)

不動産鑑定評価基準に関する実務指針

上記bの記載によると、積算価格が比準価格や収益価格との間に大きな階差を生じることがあり、その場合には、試算価格の調整の段階や、可能な場合には市場性の観点からの市場性増減価として修正することもできるとしています。

本ブログで何度か触れていますが、積算価格と収益価格の差異が大きい場合、重視されない方の試算価格への大きな重みづけを行うと、鑑定評価額が市場参加者の提示する価格とは乖離し、結局誰の目線での鑑定評価額となるかがわからないという問題があります。

上記の基準の記載は、この問題に対し、合理的に対処できる方法を示していると感じます。

まず、前者の方法では、両価格に大きな乖離が生じた場合、その差異について検討を加え、片方の価格をより重視して鑑定評価額を決定する道がまず示されています。

そんなのは当たり前、と思われるかもしれませんが、実務の現場では、鑑定評価基準の各論に、各試算価格を「関連付け」や「比較考量し」という文言があることにより、「関連付け」の場合は8:2で、「比較考量し」の場合は7:3で、といった形で、重みづけを機械的に行っている事例が多々見受けられます。

しかし、乖離が大きい場合には、試算価格で考慮することが実務指針で示されているため、これをよりどころとして、より積極的に片方の試算価格を重視する根拠となるのではないでしょうか。

また、私は後者の方法が妥当かと考えています。

なぜならば、積算価格と収益価格の間や比準価格との間に大きな差が出るということは、実際にその不動産を新たに作るよりも市場では大きな価値あるいは小さな価値が認められているということです。これは上記指針がいう市場性の要因にほかならないと思われます。

よって、乖離が生じている場合には、この不動産を新たに作る場合にはこれだけの費用が掛かるものの、市場ではそれ以上の価値(あるいは以下の価値)が認められているため、その部分は市場性による要因として積算価格に加味するという形で反映するのが合理的と考えます。

実際に、市場価値よりも積算価格のほうが高ければ、積算価格では市場で取引が発生しません。市場価格で取引が行われるため、その分は市場性による減価が必要でしょう。これは過大投資や機能的・経済的な陳腐化、あるいは自社仕様の建物で汎用性が劣る場合などに見受けられます。

一方、市場価格のほうが積算価格よりも高ければ、新たに当該不動産を作っても、そこまでの価値に及ばないというプレミアムがついて取引がされるわけですから、これは積算価格の過程で試算されていなかっただけで、本当は価格時点現在の対象不動産を再調達するにあたりかかるコストのはずです。これは、例えば、優良なテナントが入居している賃貸ビルや、長年の営業で名声を築いてきた収益性の高い不動産などが挙げられると思いますが、これらの追加価値を得るためには、やはり一般的な積算価格の試算過程では、反映がむずかしいため、市場性増減価として、一体減価率の項目で考慮すべきと思います。

(試算価格の調整で、これらの要因が反映されていないので原価法の説得力が劣ると判断して考慮するというのももちろん問題ありません)

いかがでしたでしょうか。試算価格の調整は何度も取り上げていますが、それだけ、この問題が大きいと感じています。

それぞれの適用手法では精緻に試算を積み上げてきたにもかかわらず、ここで大雑把な調整をしてしまうことで、それまでの積み上げはすべて台無しになってしまいます。

ご意見・ご感想や、その他の観点等あればお聞かせいただけますと幸いです。

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