フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章⑯(個別分析④)

不動産鑑定

やわらかい言葉で不動産鑑定評価基準及び留意事項の6章がつまり何を言っているのかをざっくばらんに、実務的な観点を踏まえながら解説・コメントしています。

(引用符で引かれた項目はすべて国土交通省の不動産鑑定評価基準及び不動産鑑定評価基準運用上の留意事項からの引用となっています。)

第一回はこちら(補足説明等込み)

フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章①
鑑定評価理論を学ぶ上でイメージがつかみにくく、最後まで暗記・理解が難航するのは第6章ではないでしょうか。 この連載では、やわらかい言葉で不動産鑑定評価基準及び留意事項の6章がつまり何を言っているのかをざっくばらんに、実務的な観点を踏まえながら解説・コメントするものです。(全文解説します。)

前回はこちら

フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章⑮(個別分析③)
不動産の最有効使用の判定に当たっては、次の事項に留意すべきである。 (1)良識と通常の使用能力を持つ人が採用するであろうと考えられる使用方法であること。

特に、建物及びその敷地の最有効使用の判定に当たっては、次の事項に留意すべきである。

(6)現実の建物の用途等が更地としての最有効使用に一致していない場合には、更地としての最有効使用を実現するために要する費用等を勘案する必要があるため、建物及びその敷地と更地の最有効使用の内容が必ずしも一致するものではないこと。

(7)現実の建物の用途等を継続する場合の経済価値と建物の取壊しや用途変更等を行う場合のそれらに要する費用等を適切に勘案した経済価値を十分比較考量すること。

②建物及びその敷地の最有効使用の判定に当たっての留意点最有効使用の観点から現実の建物の取壊しや用途変更等を想定する場合において、それらに要する費用等を勘案した経済価値と当該建物の用途等を継続する場合の経済価値とを比較考量するに当たっては、特に下記の内容に留意すべきである。

ア物理的、法的にみた当該建物の取壊し、用途変更等の実現可能性

イ建物の取壊し、用途変更等を行った後における対象不動産の競争力の程度等を踏まえた収益の変動予測の不確実性及び取壊し、用途変更に要する期間中の逸失利益の程度

ここからは複合不動産の最有効使用の話になります。

鑑定評価に当たっては、対象地の更地としての最有効使用と、対象不動産が建物及びその敷地である場合には、複合不動産としての最有効使用を判定する必要があります。

現実の建物の用途が更地としての最有効使用に一致していない場合(更地の最有効使用と現実の使い方が一致していない場合)には、

  • 現況の使用方法を継続する
  • 用途変更を行う
  • 取り壊して更地化する

というパターンが考えられます。

その際には、用途変更や取り壊しにかかる費用や時間を考慮したうえでの最有効使用を判定することが重要となります。

その際には

  • 物理的にそもそも可能か
  • 法的に可能か
  • 経済合理性はあるか

という点が重要となります。

例えば、建物を壊すことが物理的にできても、賃借人がいる貸しビルの場合、賃借人を追い出すことがそもそもできないという法的な問題が考えられます。

また、追い出すことができたとして、その補償金を考えると、経済合理性がないということも考えられます。

その場合には、土地としての最有効使用の状態にはないものの、複合不動産としては現在のまま使い続けるしかないというのが最有効使用となるでしょう。

これらの判定にあたっては、工事費、収益逸失期間などの要因を考慮する必要があります。

実務的には、そもそも賃借人居つきの状態では追い出すことが不可能に近いため、貸家はそのままの状態が複合不動産としての最有効使用とされているケースが多いと思います。

また、自用物件でも、実際に壊した方が最有効使用という取壊最有効使用の評価書を書くのは、依頼人の合意がない際にはなかなか難しいのではないでしょうか。

理論的には、土地の最有効使用と、複合不動産としての最有効使用が一致していない場合には、上記3つのシナリオについて収益還元法・開発法の観点から、それぞれの価値を計算し、最も高い価値となった使用方法を最有効使用と判定すべきだと考えます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました