条件の設定
対象確定条件
対象確定条件の設定にあたって指針では
原則的時価算定においては、利用者への影響が大きいため、原則として、現況と異なる対象確定条件を設定することは許されず、現実の利用状況を所与として行うこととなる。
財務諸表作成のための価格等調査に関する実務指針
とされています。
財務書類のための不動産評価にあたっては、財務書類が利用者に与える影響の大きさから、現状所与の鑑定評価を行うことが原則となっています。
よって、対象となる不動産のうち、土地のみの価格を算定する場合には、建物等の敷地になっている不動産についての更地のみの価格を求める独立鑑定評価などは原則的には避け、建付地価格を求めることが望ましいです。
(この場合は条件設定をすることが認められていますが、更地価格と異なる可能性があることについての説明責任は果たす必要があります。)
その他
- 賃貸等不動産会計基準に関し、連結対象会社間の賃貸借契約を無いものとして行う場合
- 棚卸会計基準に関し、棚卸資産の「完成後販売見込額」を求めるために造成工事又は建築工事の完了後の状態を前提として行う場合
等、いくつかの条件設定してもよい例外があります。
想定上の条件
原則的時価算定においては、利用者への影響が大きいため、原則として地域要因や個別的要因について現況と異なる想定上の条件を設定してはならない。
財務諸表作成のための価格等調査に関する実務指針
想定上の条件については、厳に設定を行うことが禁止されています。
調査範囲等条件
土壌汚染の有無及びその状態、建物に関するアスベスト等の有害物質の使用の有無及びその状態、埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態のように不動産鑑定評価基準に規定される条件設定の要件を満たす場合の調査範囲等条件を設定することが可能です。
但し、調査範囲等条件を設定する場合には、利用者の利益を害する恐れがないと判断されることが必要です。
よって、依頼者と相談の上、それらの対応がなされるのかを確認し、証跡を残すことが望ましい対応となります。
例示では
当該要因が存する場合における引当金が計上される場合、財務諸表に当該要因の存否や財務会計上の取扱いに係る注記がなされる場合その他財務会計上、当該価格形成要因に係る影響の程度について別途考慮される場合等が挙げられる。
が挙げられており、
不動産鑑定士による価格影響の判断を必要としない場合とされています。
不動産鑑定士としては、当該事項を考慮外とすることによる影響をしっかりと説明し、その対応方針は依頼者側で検討するという合意を取ることが望ましいと思われます。
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