後編になります。
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不動産鑑定士の仕事はAIにとってかわられるか
不動産鑑定士の仕事がすべてAIにとって代わられるということは、私はないと思っています。
AIは大きく2つのパターンで、不動産鑑定士業界に影響を与えると思います。
AIが与える影響
影響1
一つは、不動産鑑定に近い仕事をAIがこなしてしまい、鑑定士は最後の責任者として、成果物の確認を負う役目となるものです。
公的評価や路線価などはすべてAIが設定してしまうものの、最終責任者として有資格者である不動産鑑定士がその内容を確認し、責任を負うという立場で仕事が残ると思われます。
いま、AIの仕事の内容が、正しいかどうかをどのように確かめるかが課題となっています。
最新の研究現場では、AIがどこを見て判断しているか、判断根拠の可視化をするための技術が研究されています。
将来的に不動産鑑定士は、この可視化データをもとに、それが正しいのかを判断することになるでしょう。
影響2
もう一つは、シミュレーションや物件調査の相方としてAIが活躍するバターンです。
売買目的や証券化、時価会計などでは、現状の賃貸契約や事業収支に基づき、収益価格を査定するにあたり、様々なシミュレーションが必要になりますが、ビックデータからそれらを実行するサポートを行う役割をAIが担い、鑑定士はその演算結果をもとに価格判断を行うという仕事が求められると思われます。
また、AIカメラやドローンを用いた物件調査により、より精緻な減価修正を行うことができるようになるなど、鑑定士の調査能力が現在よりも高まると思われます。
このパターンでは鑑定士はAIを道具として使い、その仕事に適切なAIを選んで、データを入力し、出力結果を解釈することが求められるでしょう。
さらに、このような成果をもとに、クライアントに助言を行うというコンサルティング適な役割ができるかどうかで仕事を受けられるかどうかが決まってくるのではないかとも思います。
考察
上記の考察から、不動産鑑定会社も監査法人のように大型化が進むのではないかと思われます。
AIの導入やドローンのレンタル等、設備投資・ソフトウェア投資が必要な業界になっていくと思われるためです。
もしくは、都道府県の鑑定士協会の役割が多様化し、このような設備の共同調達や、システムの共同発注をすることになるかもしれません。
むしろ積極的にやっていくべきでしょう。
専門家は国民に求められるからこそ存在が許されています。
よって、現在顕在化されていない国民のニーズを鑑定士協会で想定し、自ら時代の波についていく、新しい仕事を作るというスタンスは非常に大切です。
今後は協会にもマーケティングが求められる時代となるでしょう。
その役割が協会に求められるのか、有限責任事業組合のような形での鑑定士相互間の協力の形が増えていくのか、法律が改正され「鑑定法人」のようなものが認められるのか、いずれにしても時代の変化への対応には、まとまった資本力も求められるでしょう。
結局のところ、私は不動産鑑定士資格には将来性はあると考えています。
これから目指す人にも十分魅力的な資格であると思っています。
しかし、それは資格があるから安心、不動産鑑定士は公的評価があるから食い扶持には困らない。
というスタンスではなく、不動産に関する社会課題は人間が生活する上ではなくならないため、必ず不動産鑑定士の能力が必要とされる場面があるからという考えに基づいています。
よって、不動産に関する知識をもって社会の課題に立ち向かいたいという方にとっては今後も魅力的な資格であり続けるのではないかと思います。
続きを書きました
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