フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章⑫(市場分析②)

不動産鑑定

やわらかい言葉で不動産鑑定評価基準及び留意事項の6章がつまり何を言っているのかをざっくばらんに、実務的な観点を踏まえながら解説・コメントしています。

(引用符で引かれた項目はすべて国土交通省の不動産鑑定評価基準及び不動産鑑定評価基準運用上の留意事項からの引用となっています。)

第一回はこちら(補足説明等込み)

フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章①
鑑定評価理論を学ぶ上でイメージがつかみにくく、最後まで暗記・理解が難航するのは第6章ではないでしょうか。 この連載では、やわらかい言葉で不動産鑑定評価基準及び留意事項の6章がつまり何を言っているのかをざっくばらんに、実務的な観点を踏まえながら解説・コメントするものです。(全文解説します。)

前回はこちら

フランクに理解する不動産鑑定評価基準第6章⑪(市場分析①)
地域分析における対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有しており、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要である。

(3)対象不動産に係る市場の特性について

①把握の観点

ア同一需給圏における市場参加者の属性及び行動同一需給圏における市場参加者の属性及び行動を把握するに当たっては、特に次の事項に留意すべきである。

先の記事で市場分析が鑑定評価でとても重要なコア部分であることを述べましたが、ここでは市場参加者をどう把握すればいいのか、留意事項が述べられています。

(ア)市場参加者の属性については、業務用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の業種、業態、法人か個人かの別並びに需要者の存する地域的な範囲。また、居住用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の年齢、家族構成、所得水準並びに需要者の存する地域的な範囲

市場参加者の属性は、不動産の利用の在り方によって変わることが示されています。

同じ業務用不動産の場合でも、収益目的なのか、自用目的なのか、はたまた、全国的に展開する事業者なのか、地域に根差した事業者なのかなど、この基準の例示以上に細かな分析が必要になります。

どのくらいの細かさまでするかというと、おおむねその把握した属性内で価値判断・価格形成要因への判断度合いが同じレベルになるくらいまでとなります。

収益目的でも賃貸収益と事業収益目的でも違いますし、賃貸収益目的でもオフィスと倉庫では違います。

オフィス用途でも、大手が入るようなインテリジェントビルと、雑居ビルでは需要者は異なります。

このような観点で、この不動産を望むのはどういう人なのか、市場参加者を絞り込んでいくことが重要です。

(イ)(ア)で把握した属性を持つ市場参加者が取引の可否、取引価格、取引条件等について意思決定する際に重視する価格形成要因の内容

上記で絞り込んだ市場参加者の取引がそもそも見込める不動産なのか、見込める価格帯はどのくらいなのか、投資判断では何を重視するのかを把握します。

例えば、倉庫を需要するような事業者であっても、扱う事業規模によって求める価格帯は違うでしょう。扱う商品によって、道路幅員を重視する度合いは違うでしょう。

イ同一需給圏における市場の需給動向同一需給圏における市場の需給動向を把握するに当たっては、特に次に掲げる事項に留意すべきである。

(ア)同一需給圏内に存し、用途、規模、品等等が対象不動産と類似する不動産に係る需給の推移及び動向

(イ)(ア)で把握した需給の推移及び動向が対象不動産の価格形成に与える影響の内容及びその程度

ここでは対象不動産の市場を分析するにあたっては、それと競争関係にある不動産の動向も把握しなければならないことが示されています。

代替関係にある不動産はどのようなもので、供給・需給はどうなっているか

その需給動向は対象不動産の価格にどのような影響を与えるのか

を把握することが大切になります。

オフィスが大量供給されたなどのイベントは、賃料の下落や空室率の上昇を招き、結果として賃貸オフィスビルの需要減、価格低下を招くことになります。

このような同一需給圏レベルのマクロ経済についても把握する必要があります。

②把握のための資料対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、平素から、不動産業者、建設業者及び金融機関等からの聴聞等によって取引等の情報(取引件数、取引価格、売り希望価格、買い希望価格等)を収集しておく必要がある。あわせて公的機関、不動産業者、金融機関、商工団体等による地域経済や不動産市場の推移及び動向に関する公表資料を幅広く収集し、分析することが重要である。

上記の事柄を把握、分析するためには、スポットで資料を集めるのは大変です。

特に、不動産の動きは波のようなものですので、時系列的な分析が必要となります。

この記述自体は鑑定評価基準が作成された時代背景として、資料収集が今のように簡単ではなかったこともあると思います。

現代であれば、時系列的な資料も入手しやすくなっています。

ただし、それでも不動産の情報を継続して収集・分析しておくことは価格に関する相場観や、価格形成要因の変動への感度を高める観点からも引き続き重要性は変わらないでしょう。

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