鑑定評価理論を学ぶ上でイメージがつかみにくく、最後まで暗記・理解が難航するのは第6章ではないでしょうか。
この連載では、やわらかい言葉で不動産鑑定評価基準及び留意事項の6章がつまり何を言っているのかをざっくばらんに、実務的な観点を踏まえながら解説・コメントするものです。(全文解説します。)
(引用は都度記載しませんが、引用符で引かれた項目はすべて国土交通省の不動産鑑定評価基準及び不動産鑑定評価基準運用上の留意事項からの引用となっています。)
前回
Ⅱ地域分析の適用
1.地域及びその特性
地域分析に当たって特に重要な地域は、用途的観点から区分される地域(以下「用途的地域」という。)、すなわち近隣地域及びその類似地域と、近隣地域及びこれと相関関係にある類似地域を含むより広域的な地域、すなわち同一需給圏である。また、近隣地域の特性は、通常、その地域に属する不動産の一般的な標準的使用に具体的に現れるが、この標準的使用は、利用形態からみた地域相互間の相対的位置関係及び価格形成を明らかにする手掛りとなるとともに、その地域に属する不動産のそれぞれについての最有効使用を判定する有力な標準となるものである。なお、不動産の属する地域は固定的なものではなく、地域の特性を形成する地域要因も常に変動するものであることから、地域分析に当たっては、対象不動産に係る市場の特性の把握の結果を踏まえて地域要因及び標準的使用の現状と将来の動向とをあわせて分析し、標準的使用を判定しなければならない。
地域分析に当たっては、特に用途の観点から区分した地域を把握することが大切になります。
この地域の範囲等については以下の文章で検討しますが、この部分では全般的な扱いについて記述されています。
なお、地域の特性というのは、その地域内の不動産が一般的にどのように使われているかということを指しています。
つまり、この地域内(近隣地域などの地域の種類については次回以降)では、不動産はどのような利用形態で使われていることが普通なのか(標準的使用)を判定するための分析です。
ただし、その内容としては、例えば一般住宅が並んでいる地域に対して、この地域の特性は「一般住宅が建ち並んでいる住宅地域」というざっくばらんな判定では分析が足りません。
この地域の判定にあたっては、地域相互間の相対的位置関係や価格形成を明らかにする手がかりとなるレベルの内容が必要となります。
例えば同じ一般住宅が建ち並んでいる地域でも、
- 一区画当たりの規模はどのくらいか
- 住んでいる人たちの収入はどれくらいか
- 住人の平均的な年齢はどれくらいか
- 交通のアクセスはどうか
など、ほかの地域と比べたときに、この地域はどのようなポジションにあるのかということを把握する必要があります。
要は、この地域の不動産の価格のありどころを判断するのに必要なレベルの調査が必要となります。
地域の標準的な使用方法は一般住宅の敷地であり、敷地規模は300㎡程度、住人は高所得層が多く、類似している地域である〇〇エリアや○○エリアと比べてやや需要が高く、それらよりも10%程度価格水準は高い。
というような具体的な利用形態と価格の在りどころをつかむ必要があります。
言い換えれば、この地域と似ているほかの地域(同一需給圏内の類似地域)を探すという観点での参考となる情報であり、その他の地域と比べてどちらの地域のほうが価格が高いか・低いかということを比べられるようにするということです。
不動産の鑑定評価においては、取引事例比較法の適用等で、この地域同士の比較を行い、地域の標準的な価格相場を求めるステップがあります。
よってここでは対象不動産の存する地域の標準的な不動産を想定することで、対象不動産と代替競争関係にある他の不動産の存する地域同士の不動産の価格水準を比較するための情報を整理します。
そのためには、まずそれらの基礎となる地域を定義する必要があり、その地域は基準に示される
- 近隣地域
- 類似地域
- 同一受給圏
というものがあることが示されています。(次回以降で示します。)
なお、最終段落では、地域は固定的なものではなく、地域要因も常に変動することから、将来の動向も併せて分析し、その地域の標準的使用を判定することが示されています。
これは、移行地等もそうですが、以前は工場値だったものの、その後マンションが建ち、住宅地化する例など、地域はその姿が変わっていくものであることを示しています。
上記では用途を示しましたが、同じ地域の範囲が、時の経過とともに広がることもあります。
よって、同一の不動産を再評価する場合でも都度実査を行い、対象不動産が存する地域の特性や範囲を確かめて、その地域の変化をとらえながら地域の標準的使用を判定する必要があります。
次回↓
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