原則的時価算定とみなし時価算定②(財務諸表作成のための価格等調査実務指針解説シリーズ)

不動産鑑定
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初めに

財務諸表作成のための価格調査を行うにあたっては、財務諸表作成のための価格等調査に関する実務指針に従った評価を行う必要があります。

当該実務指針では、会計処理の必要な場面ごとに、原則的時価算定またはみなし時価算定により不動産の評価額を求めるものとされています。

しかし、原則的時価算定およびみなし時価算定の定義と、不動産鑑定士に求められる評価との関係がわかりにくい面もあり、依頼者側もどのように評価を依頼してよいのか、鑑定士側もどのような条件で評価を受託すればよいかを説明することができず、実際の財務書類作成の現場では使えない評価書が出てくることもあります。

本シリーズでは、まず原則的時価算定とみなし時価算定を解説し、その後各ページにおいて、適用場面ごとに、どのような場面で、どのような価格を求めるべきかを解説します。

みなし時価算定とは

みなし時価算定とは、原則的時価算定以外の方法で、鑑定評価の手法を選択的に適用し、又は一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標等に基づき、企業会計基準等において求めることとされている不動産の価格を求める価格調査。

財務諸表のための価格調査に関する実務指針

と記載されており

企業会計基準等においては、「一定の評価額や適切に市場価格を反映していると考え
られる指標等に基づく価額は時価とみなすことができる」とされているために、不動産の時価を算定するにあたり、不動産鑑定評価以外の方法によることも認められるため、この規定がなされています。

上記の一定の評価額とは、不動産鑑定評価基準に則った鑑定評価額や、特定の手法を適用して求めた価額のほか、合理的な方法で査定されたものであればよく、必ずしも不動産鑑定士が行った評価に限定されるものでなくてもよいとされています。

例えば、不動産仲介業者等が提供するいわゆる実勢価格や、査定価格といわれるものも含まれると解されており、かなり幅広い資料が採用可能となっています。

適切に市場価格を反映していると考えられる指標とは、例えば、土地については、公示価格、都道府県基準地標準価格、路線価による相続税評価額、固定資産税評価額等があげられます。

対象となる資産の重要性により、原則的時価算定によらずともこのような簡易な方法により不動産価格を求めることができます。

また、どのような場合に原則的時価算定が必要で、どのよう場合にはみなし時価算定でよいのかは、別ページで詳細を記載します。

重要性の確認

最後に重要性について触れておきます。

原則的時価算定を行う場合とみなし時価算定を行う場合の峻別が、対象不動産の重要性が乏しいものであるか否かの判断に依存する場合の、当該重要性の判断は依頼者である企業が行うこととされています。
つまり、企業会計上、対象不動産の重要性が乏しいものであるか否かは、不動産鑑定士が判断すべき事項ではなく、企業会計基準等を適用する依頼者である企業が判断する事項であるということになります。
したがって、財務諸表のための価格調査を行うに当たっては、対象不動産の重要性が乏しいものであるか否かを依頼者に確認しなければならない事項となります。
なお、この場合、依頼者が行った「重要性が乏しいものであるか否かの判断」の妥当性について不動産鑑定士が独自の調査や判断を行う必要はないとされています。

但し、この重要性をどのように決めたらよいのかは、企業側でも監査法人側でも迷うことが多いと思います。

そして鑑定士にその助言が求められることもあるでしょう。

賃貸等不動産の時価開示に関する会計基準などでは、総資産に占める不動産の割合を指標とする方法が示されるなど、金額的重要性により当該重要性を判断する指針があるのでこれを参考にしてもらうことがよいと思います。

その際に鑑定士は簡易査定で不動産の概算額を示すなどの手助けができると思います。

(路線価割り戻しや簡易な原価法などで不動産の規模感を示してあげる等)

監査現場においては、当該企業の純利益額や純資産額、監査上の僅少許容額との兼ね合いで、〇%以上下落していたら、減損に引っかかってしまうという不安要素があれば、それは重要性の高い不動産として鑑定評価を依頼するようクライアントに助言するなどが求められるかもしれません。

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