不動産鑑定士試験の独学をしようと思った時、一番身に着けにくいのが論文式試験の解答方法(論文の書き方)ではないでしょうか。
短答形式と異なり論点式試験にはお作法があります。
一方、そのお作法は試験問題集や教科書ではあまり解説されていません。
ここでは、最低限の論文の書き方のマナーを解説します。
一方法として参考になりましたら幸いです。
解答用紙に記載する順番は以下の通りです。これを上から下に行います。
この論文で使う用語の定義を明確に示す
まず、この論文で使う用語や、法律の概念を定義します。
これは前回の民法編と同じです。
というより論文式試験全般に通じるものとなります。
この論文で使われる用語はこういうものですと事前に明示し、議論の土台を作る部分となります。
特に問題が難しいときには、この部分の配点が相対的に大きくなるため、軽視してはいけません。
よりどころとなる基準の考え方を示す。(原則)
次に、問題文で聞かれていることの答え及びそのよりどころとなる基準等の考え方を記載します。
これは企業会計原則やIASBの会計基準の内容、あるいは結論の背景などが該当します。
「問題文の場合〇〇となる。それは〇〇だからである(基準等の文言をもとに記載)」
という記載になるでしょう。
原則的な取り扱い、例外的な取り扱い、そしてそれはどういう考えのものにそのような取り扱いとなっているのかを明示します。
3.具体的な処理の記載
2.において、問題文に対する答えとその根拠とその概略が示されました。
このブロックででは、
- どの勘定科目が対象となるか
- 認識の基準は何か
- 測定の基準は何か
という具体の議論に移っていきます。
回答となる基準等、示した考え方によると、今回の処理は、どのような勘定科目が、いつ、いくら動くのかということを示していくわけです。
この中でも、各項目ごとにパターン分けのような記載が必要になることもあります。
測定では具体的な計算方法を示すこともあるかもしれません。
特に会計では上記の3点は基礎的な項目として重要性が高いため、勉強の際にも常に念頭に置いておくことがよいと思います。
その結果どのような影響が財務書類にあるか。(どの数値がどう変わるか、どこに記載されるか)
ここまでくればあとはとりまとめです。
これまで論じてきた考え方、処理の結果、最終的にはどの財務諸表(貸借対照表等)のどの勘定科目に、どの会計期間に、いくらの影響があるか、を示します。
もちろん上記の一部は必要がないこともありますが、会計学の基本は、与えられた経済事象はどういう考えのもとどう処理されるかを示すことです。
それを念頭に置いてまとめましょう。
まとめと補足
会計学においては、
- 理論がどのようになっているか
- その背景はどのような考え方のもと成り立っているか
- であればどのような処理をすることが妥当であるか
- 処理結果は会計情報としてどこにどのように表示されるか
ということが重要となります。
特に会計基準の結論の背景においては、その処理がどのような経済事象に基づいて発生しているかが明示されており、その事象を正しく会計処理として帳簿に落とし込む(認識・測定)にはどうしたらよいかが、理論的に記載されています。
こういう事象は、こういう理由で、こういう処理がされる
という理解を論文に示すことが重要です。
会計基準に記載が明確にない処理や、あるけれども論文試験で思い出せないときには、この結論の背景をもとに作文することが重要となります。
会計では同じ事象には同じ処理がされることが重要で、民法の類推適用のように、似た事象の会計処理を使うことも多いです。
よって丸暗記というよりもその処理の背景を理解しておくことが、安定的に会計学で点数を取るコツです。
(ただし、個人的な感想としては、会計学に関しては、近年の易化の影響がとても大きくなっているように思われるため、ここまでの労力を割くかということは課題と思われます。)
税理士試験や会計士試験では上記の考えは使えると思います。
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